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第17話

政府官邸にて、政府が設定するブラン共和国とのオンライン会談に出ていた歩は、微かな違和感を感じていた。 (国王、何か言いにくいことがありそう) 「どうした」と、小声で辻堂に話しかけられる。持っていたメモに走り書きをし、辻堂に見せた。 『国王は、何か言いにくそうにしています。ハッキリとはわかりませんが、そんなニュアンスを言葉から感じます』 辻堂は少し考えて、議長に発言の意思をを伝えた。「それでは最後に、辻堂伊織さん」と 議長より発言を許可された。 「僭越ながら、国王。何か他に問題がありますでしょうか。今、国王を悩ませていることをお聞かせ願います」 辻堂らしいストレートな言葉を、そのまま歩はブラン語に変え伝えた。 プロジェクトも支援も順調に進んでいる。そんな中で問題なんてあるのだろうか。国王も意欲的に取り込む姿勢を見せてくれており、問題点は既に出し尽くしていた。これ以上何かあることはないと、政府も国連もここにいる全員が思っている。そのため、周りから指すような視線を感じていたが、辻堂は毅然とした態度で国王の反応を待った。 真っ直ぐ目を向けていた国王が、ゆっくりと目を閉じ話始めた。 「こちらで解決しないといけない問題なのですが…」 ブラン共和国は、国の大半を砂漠で占めているが、豊かな海に面してるため魚介類が豊富だという。また、標高4000メートルの山脈では雪が降るため、雪解け水を飲料水や農作物に利用している。そのため、色々な食材の原産国として重宝され、開国してからは、観光と農業で成り立つ国だ。 その山間に暮らす少数民族がいる。 彼らは綿を栽培し、綿糸を作り伝統的な手織りをして生計を立ている。 手織りの技術は高く、美しく独特なデザインもあり海外からの受注を受け持つようにもなっているらしい。 ブラン共和国の民族衣装も彼らが作っているという。 問題は、少数民族の彼らとの意思疎通である。 彼らは独自の言語を使用しているため、今までは語学能力のギフトを持つ者がお互いに通訳をしていた。 だが、語学能力のギフトに障害が出たため、意思疎通は上手くいかなくなり、現在、彼らは孤立しており、生計の危機が訪れていると言う。 ブラン共和国が抱えているギフトの障害は、メンテナンスを受ければほぼ、解決すると言われていた。 そのため、フォルス社が請け負い、既に着手しているが、まだテスト段階で本稼働まではもう少し時間がかかるだろう。 「多くの国民と、山間に住む少数民族、 全ての人を救うことは出来ないかと常に考えている」 国王の言葉にハッとする。 少数民族には独自の世界があり、政府も国連も下手に手助け出せないところがある。一歩間違えると、国と国の問題になってしまう可能性があるからだ。国王もそれはわかっていたのだろう。 その場の全員が沈黙し重い空気が流れている中、辻堂が発言した。 「民族の問題は手出し出来ないが、個人の問題は手助け出来る。個人の問題として捉えればいい」 辻堂の言葉を言い換えれば、利害関係があると簡単に助けられないが、友達が困ってるなら助ける、だって友達だろ。というシンプルで、ストレートな辻堂そのものを表してる言葉だった。 その思いを理解し、歩は国王に伝えた。 「ありがとう…」 国王は真っ直ぐに見て力強く答えた。

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