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第19話※
バスルームは音が響く。
どんな小さな音も拾い、大きく反響させる。
「んんっ…ああ…はあ…」
ジャグジーの中で向かい合わせになり、辻堂の上に歩は座る形になった。深いキスをされ、寄りかかるように引き寄せられる。首筋から鎖骨にかけて吸い付くようなキスをされる。二人の起立も擦れ合い、胸や肩など肌と肌が触れ合うのが気持ちがいい。辻堂の肌は心が解れていくような感覚だと歩は思った。
反響する自分の声と、キスの音が耳に戻り、恥ずかしくなるのに、下半身は熱が入り勃起している。辻堂の手が二人の起立を握る。
「い、いや…声が…んんっ」
「気にするな、誰も聞いていない」
辻堂の裸体を目にした。胸板が厚くがっしりとしている。鍛えられた肉体は逞しい。その人に抱きしめられ、肉体に触れると興奮を覚える。
辻堂の男根はカリが張り出ていて、大きく、筋張っていた。直接見たのは初めてで、少し怖いけど目が離せない。大きい起立を擦り付けられると、自然に腰が揺れてしまう。
水の中でもゴリゴリとした感覚が伝わり、大きな手の辻堂が二人のペニスを扱くたびに快感が走る。歩がしがみつく度に身体は更に密着する。
辻堂の動きが大きくなり、風呂の湯が揺れ、歩の腰が浮いた。
腰を押さえつけられ、いつもより激しくグラインドされ、水の中で反響する。
「歩…」
「ひっ…や、やぁぁ…いく…」
「ああ…俺も…」
湯の中に二人分の精子が流れ出す。
風呂から上がり、ぐったりとした歩をかいがいしく世話をする辻堂は、どことなく楽しそうに見える。
ドライヤーをかけてもらい、水も飲ませてくれて、パジャマのスウェットを着せてくれたが、今日は別々の部屋で寝るんだろうなと、何故か寂しい気持ちになっていた。
「じゃあ…部屋に行きます」
歩が立ちあがろうとすると、辻堂はすかさず横抱きにし、辻堂の部屋の方へ歩き出した。
「違います。部屋は、あっちです」
「こっちだろ。寝るのは」
「いや、今日、その、だって…」
ここ最近は、毎日辻堂のベッドで寝起きしている。だが、今日はそこで寝る理由が無かった。
電気を放ってしまう症状を抑えるためにキスをしてくれて、夢精をしないために、あの行為をしてくれてる。
歩はそう考えていた。
(今日はバスルームでやっちゃったから… 一緒に寝る理由はないし…)
抵抗しても、辻堂は涼しい顔をしてそのままいつものように、辻堂のベッドまで歩を運ぶ。
「明日の朝、また夢精してたら落ち込むだろ。まあ、その時は俺が片付けてやるから安心しろ」
辻堂は、ニヤリと笑い意地悪なことを言うが、ベッドに降ろす仕草は、壊物を扱うように優しい。
歩は、ベッドに横になっても、まだ眠気は来ない。気が高ぶっているのか、それとも、昼間のことが気になっているからか。
(莉緒 さんって人のギフトメンテナンスに一緒に入るって言ってたよね… )
辻堂のプライベートの交流関係は、知らない。毎日一緒に生活はしているが、家族や友人、恋人の話は聞いたことがなかった。
発言や行動にブレはなく、強い芯を持つ辻堂は、見た目もかなりいい男だ。会社の女性達が「恋人がいないわけがない」と噂しているのを聞いたこともある。
(恋人かな…)
何故こんなにも辻堂のことが気になるのか。辻堂が、他の誰かと生活すると考えただけで胸がツキンと痛くなる。
(そろそろ家に帰らないと…もう体調も大丈夫そうだし…伊織さんに迷惑かけてるしなぁ)
家に帰ることを考えると、急に切なくなり、胸の辺りがぎゅっと締め付けられる。ずっと一人で生活してきたのに、居心地のいい、今の環境に慣れてきてしまったからだろうか。
この日は何度も寝返りを打ち、中々眠ることが出来なかった。
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