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第27話

ブラン共和国の食べ物は美味しい。 素材の良さと多種多様なスパイスが味わい深い料理だ。灼熱の国で取れるトマトなどの野菜は、味が濃縮していて感動するほど美味しい。 この国の滞在もあっという間だったなと、 歩は食べながら考え、少し寂しくなった。 食事は親密度を上げる効果があり、距離を縮めると感じる。国王は、気さくな立ち振る舞いでもてなしてくれた。 端正な容姿であり、話をしていても頭脳明晰と感じる。国民からの人気も高いだろう。これからは、少数民族であることにより、本来得られる教育を受けられないプカの人達の教育にも力を入れていくと言っていた。 「伊織、ありがとう。私はお前に約束する。全国民を守ると」 「わかった、期待している。ルカ」 国王と辻堂は、いつの間にかファーストネームで呼び合う仲になっていた。 「それと…えーっと、歩」 国王が歩に向き直り改めて話をする。 「私も犬を飼っていてだな…犬はマーキングするんだ。大きい犬になればなるほどだ。仕方ないことなんだ」 「犬…ですか…?」 何故ここで急に犬の話になるのか、歩にはサッパリわからなかった。 「そう、犬。いや、私も犬の気持ちはよくわかる。うん、そう。すごく、ものすごくわかる。私にとってマーキングは…いや、犬にとってマーキングは非常に大切なものにしてしまう。自分のものにしたい気持ちが強くなるんだ。それと、犬は周りを威嚇してしまうこともある。だから、な、許してやって欲しい」 なんだかわからないが、国王が許してやって欲しいと言うので、コクコクと歩は頷き答えた。 「あの、国王。僕、犬飼ってませんけど、大切なことだということはわかりました」 吉川が肩を揺らして笑っている。 「あの…吉川さんもブラン語わかるようになりました?国王が何故か犬の話をされて…」と、歩が吉川に話しかけると 「私も何となく言葉がわかるようになりました。犬の躾は大変だって話ですよね」と、まだ笑っていた。 歩の鎖骨に散らされたキスマークは、 ここにいる全員が見て見ぬ振りをしている。ああ、牽制して周りを威嚇して、マーキングされちゃったんだなと、国王を始め全員が同じことを考え、少なからず歩に同情もしている。 そんなことを皆が考えてるとは知らず、歩はきょとんとしたままだ。盛大に威嚇をした張本人の辻堂に至っては、涼しい顔をしていた。

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