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第42話 One year after story

ここの時間はゆっくりと流れている気がする。いつも時間に追われた生活をして、疲れていたようだと気がつく。ゆっくりとした時間と場所が心地いい。 歩とは夜にしか会えないが、それでも同じ場所にいて、毎晩ベッドで一緒に寝れるのは気持ちの上で大きい。 早朝、まだ歩が寝ている間に外に出て、プルメリアを集めるのが日課となった。 そこで仲良くなったブランの人がいる。初めてプルメリアを集めた時にボックスを探し持ってきてくれた人だ。 ブラン語と英語のミックスで会話をしている。彼の名前はサンといった。明るい青年だ。 サンにはヨウという兄がいて、サンもヨウもこの施設で働いている。二人と辻堂は仲良くなっていた。 今朝、プルメリアを拾いボックスに詰め込んでいたら兄のヨウが話しかけてきた。 「伊織…伊織のギフトって何?」 「に、兄さん!お客様にプライベートな事は気軽に聞いちゃダメって、歩先生に言われたでしょ?しかも敬語で話しないとダメでしょ!」 ヨウが辻堂に質問した内容が聞こえたらしく、慌てて弟のサンが止めていた。 「ああ、別にいいよ。敬語じゃなくても気にしない。それと、俺はギフト無しだ」 確かにプライベートな話だが、ギフト無しを隠す必要は無いし、敬語でなくても構わないので辻堂はそう答えた。 二人は驚いた顔で辻堂を見ている。ギフト無しが珍しいのだろうか。 「伊織、ギフト無しで困ったことないか?今までも、これからも無くても問題ないのか?」 慌てたようにヨウが聞き始める。 「問題はないな。俺は昔、ギフトを持っていたが自分の意思で手放したんだ。だから後悔もしていないし、不自由もない」 ヨウはその後考え込み、何か言いたそうな顔をしている。 「ヨウ…俺はあそこのドームに滞在している。仕事が終わったら来てもいいぞ?夜になるまでなら相手してやるから」 ここはゆっくりとした場所だからなと、伝えてあげた。

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