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第22話上書き★

 シャワーの音と共に、舌が絡まる音が響く。  すぐに息を上げてしまった俺は、唇が離れるとともに奏さんの胸に顔を埋め、荒く息を繰り返した。  やばい、キスでおかしくなりそうだ。腰が砕け、立ってられなくなってしまう。 「緋彩の体重なら、僕でも抱いて運べそうだから運んで行こうか?」  笑いを含む声で言いながら、奏さんは俺の頭をそっと撫でた。  さすがにそれは恥ずかしすぎる。  でもだからといって今、俺は歩いて寝室に行ける自信もなかった。  俺は顔を上げ、奏さんの名前を呼ぶ。 「奏さん……」 「そんな声で呼ばれたら、僕、ここでしたくなっちゃうよ」  苦笑して、奏さんは俺の尻を撫で、尻穴に触れる。 「あ……」  ただ少し触れられただけなのに、俺は思わず声を上げてしまう。  やばい、穴がひくひくとひくついているのが自分でもわかってしまう。  シャワーを止めて浴室を出た後、身体を拭き激しく口づけを交わした。  わずかの時間も惜しい。  舌を出すと奏さんが俺の舌を吸い、俺の口の中を舐め回していく。  抱き合ってキスをしながら俺たちは寝室へと行き、そのまま俺は、ベッドに押し倒された。  奏さんは唇を滑らせ首に口づけ、胸を撫でる。 「……乳首、大きい」  その呟きの裏に嫉妬心が見え、俺の心は震える。  蒼也によって開発さえた身体には、様々な痕跡が残っている。  首に残る噛み痕、やたら大きな乳首に、肌に残るキスマーク。  奏さんは俺の乳首を指でくにくにと捏ね回し、もう片方の乳首を口に含み舌で転がす。 「ふ、あ……あぁ……」  人に撫でられ舐められるのが気持ちいいなんて変な気分だった。  嫌悪感しかなかった行為なのに、今は欲しくてたまらない。   「キスマークがあるけど、これ、この間のだよね」 「……そう、だと思います」  恥ずかしさに顔が爆発しそうなほど熱い。 「じゃあ全部、僕の痕にしないと」  そう呟き、奏さんは俺の肌に口づけを落としていく。  見たくなくて、俺の肌に残る口づけの痕なんてちゃんと見ようとしたことがない。  だからどれほど俺の身体に痕があるのか知らなかった。  でもこれで全部蒼也の痕跡は奏さんの痕になるんだ。そうしたら俺は……ちゃんと自分の身体を見られるかもしれない。 「う、あ……」  奏さんが唇と手が、徐々に下へと下りていく。  手が太ももを撫で、ペニスに触れる。 「ひ……」  思わず腰を引き逃げようとすると、奏さんの手が止まった。 「怖い?」  その問いに俺は頷く。  慣れているはずなのに、恐怖心が強く出てしまう。 「緋彩」  優しく名を呼び、奏さんは俺のペニスを撫でながら、口づけてくる。  俺は、彼の首に腕を絡め自分からも舌を出した。  激しく舌が俺の口の中を蠢き、手の動きも早くなっていく。  キスも、ペニスを扱かれるのも気持ちいい。  身体の奥底が熱くなり、穴がひくつく。 「奏さん……中、欲しい……」  キスの合間にそう訴えると、奏さんは俺から一度離れベッドボードの収納からローションのボトルを取り出した。  その中身を指に絡めると、俺の足を抱えあげて穴にゆっくりと差し込む。 「分かってはいたけど……中、柔らかいね」  それはそうだろう。  そこに、蒼也のペニスを何度も受け入れてきたんだから。  いっきに指二本が入り、前立腺へと触れる。 「あ……」 「これならすぐに入りそう」 「う、あ……」  前立腺を押しつぶされるたびに、腰から快楽が這い上がり息がどんどん荒くなっていく。  俺のペニスはすでに硬く勃ちあがり、だらだらと先走りを溢れさせている。  ぐちゅぐちゅとローションが音を立てて俺の中を蹂躙していく。  やばい、このままだとあっという間に出してしまいそうだ。 「か、なで……さ……そこ、だめぇ……イくからぁ!」 「それは勿体ないね」 「あ……」  指がするり、と引き抜かれ切ない声が漏れてしまう。  奏さんはベッドボードへと手を伸ばし、小さな白い袋を手にした。  ゴム、ちゃんとしてくれるんだ。  よかった。中に出されると後の処理が大変だし、下手すると腹を壊す。  こういうのがちゃんとあるってことは、今まで何人かと交際してきてるんだろうな。  それはそうか。奏さん、モテるだろうし。そう思うとその相手にちょっと嫉妬してしまう。  奏さんは俺の足を抱え上げると、ゆっくりと腰を埋めた。 「ひ、あ……」 「すんなり入っちゃった。これなら全部入るかも」 「あぁ!」  先端が前立腺を掠め、あっという間に奥までたどり着く。 「あ……はぁっ……はぁっ……」  やばい、奥、当たってる。  奏さんは身体を折り、俺に顔を近づけると、うっとりとした顔で呟く。 「愛してるよ、緋彩」 「あ……奏、さ……」  蒼也の愛情とは全然違う、仄暗さのない言葉に俺は泣きそうになる。  愛されていいんだ、俺。  ……好きになっても……いい? 「奏さん、俺……本当に好きになっていいんですか?」  思わずでた不安に、奏さんは俺の頬を撫で口づけて言った。 「僕は君を拒絶しないよ。それに君は、僕を否定しないでしょ?」  この人も、その力のせいで否定されて傷ついてきたんだ。  俺は奏さんの首に腕を絡めて言った。 「だって、俺には奏さんが、必要だから……」 「そう言ってくれて僕は嬉しいよ」 「あ……」  奏さんがゆっくりと抽挿を始め、奥を突かれるたびに俺は喘ぎ腰を揺らした。  セックスってこんなに気持ちいいものだったのか。  奏さんが動くたび、快楽が背筋を這い上がりとめどなく声が漏れていく。 「奏、さん……中、イイ……」 「緋彩の中……気持ちいい……これ、やばいかも」  切羽詰まった声で言い、奏さんは腰の動きを早めていく。 「う、あ……奏さん、奏……!」  名前を叫び俺はあっけなく達し、中にある奏さんのペニスをきゅうっと締め付けた。 「僕も出る……」  短く告げ、奏さんが動きを止める。  あ……奏さんもイったんだ。  彼は荒く息を繰り返したあと、俺を見つめうっとりと呟く。 「愛してるよ、緋彩」  そして唇が重なったあと、俺は彼にお願いをした。 「奏さん……あの、首……噛んでください」  俺はオメガじゃないけれど、うなじには今もきっと、蒼也の痕跡が残ってる。  それをそのままにしているのは嫌だ。  上書きできるなら全て上書きしてしまいたい。  奏さんは俺の中から引き抜くと、俺をうつ伏せにさせ、首に顔を埋めた。  そして、うなじにがぶり、と噛みつく。 「う、あ……」  痛みにじわりと涙がでてくる。でも、これで俺は……蒼也の物である証がなくなるんだ。  やっと、俺は解放されるんだ。  蒼也の執着から。  奏さんは、噛み痕をペロペロと舐めたあと、 「痛くない?」  と、労るように言った。 「だ、大丈夫……です」 「ごめんね、噛むのは初めてだから……加減がわからなくて。すごい、痕ついちゃった」 「いえ……噛まれて、俺、嬉しい、から……」  そう告げると、奏さんは俺の隣に横たわり、身体を抱きしめて言った。 「そんな可愛いこと言われるとまたしたくなるよ」  その言葉通り、俺の腹に奏さんの膨らんだペニスが当たっているのがわかる。  さすがにこのまま二回目、というのはきつい。明日は大学がある。  アルファは何度でもしたがるし、何度でもできるんだっけ。  妊娠のタイミングを逃さないように。そして、オメガは何度でも欲しがるらしい。  でも俺はオメガじゃない。だから何度もは無理だ。  身体が保たない。  俺が戸惑いの顔をしたせいか、奏さんは苦笑して言った。 「ごめんね、大丈夫だよ。今日はもう、これ以上はしないから。でも、嬉しすぎて帰したくないかも」  帰したくない。そう言われると俺も帰りたい気持ちが失せていく。  いや、そもそも帰りたい気持ちなんて最初からないか。  俺は奏さんの背中に腕を回し、顔を見つめて言った。 「俺も……できれば、このままここにいたい、です……」  声を震わせて言うと、奏さんは俺を仰向けにして、獣のような目をして俺を見つめた。 「前言撤回。これ以上しないって言うのは、無理かも」  そして奏さんはゴムを外し、ウエットティッシュで俺の腹とペニスを拭った後、噛みつくように俺に口づけた。

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