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第28話僕の事だけ考えて?★

 外で夕飯を済ませたあと、俺の家に寄り、荷物を回収して奏さんのマンションに向かった。  蒼也が待っているんじゃないか、と思ったけれど、あいつの姿は見なかったし返信もこない。  ……あいつ、大丈夫だろうか。  そんな思いがよぎるけれどだからといって電話する気になどなれずもやもやをかかえていた。  奏さんの部屋に入り、荷物を置いて俺はそのままソファーにぼすん、と腰掛ける。ならないスマホを握りしめて。  別に連絡ないならないでいいが……よくねぇか。これじゃあなんにも変わんねぇもんな。 「……緋彩ってば」  肩を揺すられて俺は驚き顔を上げる。  すぐ目の前に奏さんの顔があり、俺は目を瞬かせて言った。 「あ……な、何か言いました?」  すると奏さんは俺の顎を取り、じっと俺の目を見つめて言った。 「何考えてるの」  声が怖い。  威圧するような声に俺は戸惑い目を泳がせた。 「え、あ……」 「ずっと、顔が暗いけど。何を考えてるの?」  唇がつくかつかないかの所まで奏さんは顔を近付けてくる。目が怖い。  俺は唇を震わせて、 「め……メール、返ってこない、から……気になって……」  と、素直に答える。  すると奏さんはすっと、目を細くして、 「もしかして、弟君?」  と、険しい声で言った。  奏さん、蒼也の事を嫌っていたっけ。それはそうだよな。あいつは俺をずっと、無理矢理抱いてきたんだから。 「そっか。弟君が来るんじゃないかって、怯える日々を過ごすより対峙して決着つけることに反対はしないけど……」  言いながら、奏さんは俺の背中に手を回し身体を引き寄せてくる。 「僕といるときは、僕だけを見ていて欲しいな」  そう告げて、奏さんは俺に唇を重ねた。  触れるだけのキスを繰り返したあと、舌が唇を割り口の中を舐めていく。  これは嫉妬、だろうか? それとも別の感情だろうか。  アルファの執着心は強い。それは蒼也を見てきたからよく知っている。だから……奏さんの前で蒼也の話題はまずかったかも知れない。これでは俺……今夜、無事に過ごせるだろうか?  奏さんは口づけたまま俺をソファーに押し倒し、Tシャツを捲り直接肌を撫でていく。 「ん…あン……」  思わず声が漏れてしまい、俺は口を手で覆った。  指が俺の乳首を弾き、じりじりとした感覚がそこから生まれ身体中に広がっていく。  まだシャワーを浴びていないのに、このままじゃあソファーでイかされてしまう。  舌は俺の口の中を蹂躙し、徐々に頭がぼうっとしてくる。  俺は奏さんの背中に手を回し、自分からも舌を出した。  舌同士が絡まりあい、唾液が混ざる音が耳を犯す。  唇が離れ、首に口づけが落とされてちゅう、っと音を立てて肌を吸い上げられる。  そこに痕がついたらさすがに見えてしまうのに。  前に抱かれた時、奏さんは見えるところに痕をつけるようなことはしなかったのに。  奏さんは俺のTシャツを脱がせると、胸をぺろぺろと舐めながらソファーに押し倒した。 「か、かなで、さ……」 「なあに、緋彩。もう、我慢できなくなってる?」  意地悪い声で言い、乳首に口づけながら俺の股間へと触れる。  それはすでに硬くなり、先走りが下着を濡らしている。  やばい、このままじゃあ、ソファーの上でイかされてしまい。  俺は、こくこく、と頷き、 「出そう……」  と、小さく呟いた。  さすがに下着を汚したくないし、ソファーでヤるのは嫌だ。  奏さんは俺の胸から口を離すとじっと、顔を見つめてにこっと笑う。 「出してもいいよ。どうせ、しばらくここに泊まるんだし」  そう言われ、俺は首を横に振り、彼の首に腕を絡めた。 「やだ……俺は……奏さんのが……イい……」  呻くようにそう告げると、息を飲む音が聞こえた気がした。 「ねえ、緋彩。僕、今日は優しくなんてできそうにないよ」  まるで獣のような目をした奏さんは、そう言って俺が履いているジーパンのファスナーに手を掛けた。  風呂場で、奏さんに腹の中を綺麗にされたのは、正直恥ずかしすぎて……おかしな気分になった。  風呂ですっかり息が上がってしまった俺は奏さんに抱きかかえられるように寝室に運ばれて、ベッドに寝転がされた。  やばい、尻穴がひくつき早く中に突っ込んでほしくてたまらない。  奏さんは俺の足を抱え上げると、ゆっくりと指を中に差し入れた。 「んン……あぁ……」  すんなりと中に入った二本の指が内壁を撫でていく。  早くイきたい。  さっき、風呂で散々なかを弄り回されたけれど、イくことは許されなかった。  俺のペニスはすでに硬く勃ちあがり、先走りを溢れさせ、腹の奥が疼いている。   「奏、さん……イきたい……」  鼻にかかる声でそうねだるけれど、奏さんは肝心な場所に触れようとはしてくれなかった。 「もう少し我慢して」 「う、あぁ……」  指はゆっくりと出し入れされ、刺激を求めて思わず腰が揺れる。   「そんなに欲しいの、緋彩?」 「ほ、欲しい……です。だって……もう、俺、むりぃ……」 「僕はもっと君が喘ぐ姿を見ていたいんだけど?」  言いながら奏さんは前立腺に触れ、俺は腰を浮かせ大きく声を上げた。 「あぁ!」 「緋彩、僕の事だけ考えて? ほら、今、何本、指が入っているのかわかる?」 「う、あ……に、ほん……あぁ!」 「すごい締め付け。ねえ、緋彩、僕は君の全部が欲しいんだ」  そして、奏さんは指の抜き差しを繰り返しながら俺に口づけた。俺も喘ぎながら必死に舌を出してそれに応える。  全部が欲しいってどういう意味だろうか?  俺の心も身体もすでに奏さんのものになっているだろうに。 「自分でも醜いって思うんだけどね、君の口から弟君の話が出ると……」 「……!」 「自分が抑えられなくなるんだ」  一気に奥まで貫かれて、俺は思わず背を反らす。  奏さんの顔を見ると、飢えた肉食獣のような目で俺を見つめている。  その目に、俺は思わず声を漏らす。 「あ……」 「動くよ、緋彩」 「う、あ……あ……」  奏さんの動きに合わせて俺の身体が揺れて声が出る。  奥を突きたてられるたびに快楽が腰から這い上がり、ペニスからはだらだらと先走りが溢れて腹を濡らす。  嫉妬するほど、俺は奏さんに愛されている?  自分が誰かにそんな風に思われる日が来るなんて  蒼也に心を惑わされず、ただ奏さんだけの事を考えられたらどれだけいいだろうか?  その為にも俺は……ちゃんと蒼也と向き合わないと。 「気持ちいい……ねえ、中に、出してもいい?」  余裕のない上ずった声で言われ、俺は頷きながら答えた。 「な……か……出して、中……」  中に出されると後が大変だ。下手すると明日腹を壊す。  そんなことはよくわかっているのに俺は、奏さんの申し出を嬉しいと思ってしまう。  俺はオメガじゃない。  だけど……アルファである奏さんに求められて、抱かれて中に出したいと思われるのに幸せを感じてる。  セックスも、中に出されるのも、蒼也にされるのは嫌でたまらなかったのに。こんなにも変わるものなんだな。  俺の答えに奏さんは嬉しそうな顔をして、腰を激しく揺らす。 「ひ、あ……あ……イ、イく……イく、からぁ……」  奏さんが動くたびに前立腺や内壁、奥を刺激され、快楽が背筋を這い上がり脳を侵していく。  下半身に熱がたまりそして、びくん、と身体が震え俺は射精した。  精液が俺の腹と奏さんの腹を濡らす。それでも彼は気にする様子もなく、腰を揺らし、 「出る……」  と、短く告げ動きを止めた。 「あ……」  腹の奥が熱い。  あぁ、奏さんが中に出したんだ。  嫌だったことのはずなのに、俺の心は幸せを感じてる。 「奏さん……」  名前を呼ぶと、嬉しそうに笑い、俺の頬を撫でて言った。 「もう少し味わっていたかったのに、中、すごい締め付けるんだもん」  そう言われ、俺の顔中が紅くなるのを感じる。  イくのをコントロールできるわけじゃないし、締め付けたくて締め付けてるわけでもないし、って俺、何考えてんだ?   「だ、だって……気持ち、いいって思った、から……」  恥ずかしく思いながら言うと、奏さんの目がすっと細くなった。 「この間は怖がっていたもんね。ほんと、そんな風に君を怯えさせる彼が、僕には許せないんだ」  口調は静かだけど、奏さんの声にはわずかに憎悪が混じっているような気がする。正直、声が怖い。 「か、奏、さん……」  俺の口から出た声が震えていただろうか、奏さんは首を横に振り、いつもの優しい笑みを浮かべて言った。 「せっかくふたりでいるんだから、ねえ、緋彩。互いの事だけ考えようよ。僕は君に望まれるのが本当に嬉しくて仕方ないんだから」  そして、奏さんは俺に口づけた。

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