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第31話愛されてる
明日、三十日は昼からバイトがある。
そして明後日は父に会う日。
明日はどうせ何もできないだろうし、明後日はきっとそう言う気持ちにはなれないだろう。
だからだろうか。
午前中はお互い課題をして過ごしたものの、お昼の後、奏さんはソファーに腰かけて課題の続きをしようとタブレットを手にした俺に、後ろから首に腕を絡めてきたかと思うとこめかみに口づけてきた。
「あ……」
「緋彩……」
余裕のない声が、耳元で俺の名前を呼ぶ。
「か、かなで、さ……」
俺はタブレットを抱きしめて、息を漏らしソファーの背もたれに深く身体を預ける。
昨日の夜散々啼かされたのに、すぐに俺の中心に熱がたまっていく。
やばい、ジーパンが苦しい。
奏さんはTシャツの上から俺の乳首を弄り、爪先で弾く。
「んン……」
じん、と甘い痺れがそこから生まれて俺は身をよじる。
「もう乳首立ってる」
そんな囁きに俺の顔が紅く染まっていくのがわかる。
やばい、これ。耐えられない。
奏さんは俺の乳首をクニクニといじりながら、俺の首に口づけを落とす。
ちゅうっと音を立てて吸われて、俺は息を漏らした。
「ん……あぁ……」
「緋彩……好きだよ、緋彩」
余裕のない声で囁き、奏さんの指の動きが早くなっていく。
まだ服の上からしか触られていないのに、乳首はきっと紅く腫れているだろう。
「か、なでさん……」
蒼也に何度もされている行為なのに、奏さんにされると嫌悪感はなくて快楽が大きい。
我慢できなくなった俺は右手でジーパンのファスナーとボタンを外し、硬くなり始めたペニスを引きずり出し自分で扱き始めた。
「緋彩、自分で扱いてるの? 可愛いね」
見られながら自分でするなんて恥ずかしくてできるわけないのに、今の俺はそんなことを気にする余裕はなかった。
もっと欲しい。
奏さんに求められたい。
俺は奏さんの方を振り返り、
「もっと……ちょうだい?」
と、俺の声とは思えない高い声で言った。
ゴク……と、唾を飲む音が聞こえた気がした。
奏さんは、振り返った俺の顎をとり、唇を重ねてきたので俺は自分から唇を開き、奏さんの舌を受け入れた。
キス、気持ちいい。
舌が絡まり、口の中を舌が蠢く。
唾液の絡まる音がイヤらしくて、俺はどんどん煽られていく。
まだ昼間だっていうのに。
俺は今、奏さんが欲しくてたまらない。
「ん……あ……かなで、さん……」
「僕以外誰も見ていないんだから、もっと激しく手を動かしても大丈夫だよ」
奏さんはそう言って、ペニスを扱く俺の手に自分の手を添えて、上下に激しく動かし始めた。
「あ……あぁ……奏さん、だめ、イっちゃう、からぁ……」
「その声、ほんと、可愛いね。僕もシたくなっちゃう」
「んン……手、止まらないよぉ……」
ペニスを扱く手は激しく動き、腰から這い上がる快楽が全身へと広がっていく。
「あ……あぁ……だめ、出る、からぁ……!」
びくびくとペニスが震えたとき、奏さんの手が俺のペニスの先端に触れた。
その手の中に俺の精液が放たれ、俺は大きく息を吐いた。
「あ……あぁ……」
奏さんの手が、俺の精液で汚れていく。
止めたいのに止めることはできなくて、俺は奏さんの手に精液がたまっていくのを見つめた。
「昨日したばかりだから量は少ないね」
笑いながら言い、奏さんは俺の耳元に口づけた。
「あ……」
「もっと緋彩が乱れるのを見たい。ねえ、緋彩。僕の所においでよ」
その甘い囁きに、俺の心は揺れ動く。
奏さんと一緒にいられたら俺は……自分のこと、もっと好きになれるだろうか?
ずっと人に否定されて、蒼也に抱かれ続けてきて。人と関わらないように生きてきた。
こんな風に奏さんに愛されて、俺、本当に大丈夫なんだろうか?
「でも、俺は弟に抱かれ続けて……」
穢れているのに、と言いかけた声は、口づけに飲み込まれてしまう。
口の中を舌が動き回り、舌をちゅうっと吸い上げられて気持ちよさに俺はペニスに添えた手を徐々に動かし始めた。
やばい、これじゃあもっと欲しくなる。
でもその前に風呂入らないと……でも、まだ昼間だし、今日は長い。
今ヤってもきっと夜、奏さんは俺を求めるだろう。
俺はオメガじゃない。
アルファの底なしの性欲を向けられて耐えられるとは思えない。
唇が離れたとき、奏さんはじっと、俺の目を見つめて言った。
「それでも僕は君を選んだんだよ。僕は君を手放す気はないし、君だけを愛してるんだ」
アルファ特有の、強い独占欲と絡みつく深い愛情。
もうずっと、愛されているなんて実感、もったことなんてなかったからかな。
仄暗さを感じる愛情を向けられて俺は、どんどんこの人に溺れていく。
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