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夏祭り編 第2話
「……生クリーム」
「へぇ、すごいサービスだね」
昔ながらの~なんて書いてたくせに渡されたのは20センチくらいのアイスキャンディーに生クリームとチョコがかけてあった。
「食べにくそうだな」
「確かに」
苦笑する優斗さんと買った食べ物を持って食べやすい場所を探す。
どこに行っても人は多かったけど少しだけ人気がまばらなところを見つけて座り込んだ。
「この焼きそば美味しい!」
露店の焼きそばって妙に美味しく感じるのはなんでだろ。
濃い目の味付けが暑い中で食べるとちょうどいい気がする。
「ビール飲みたくなるー」
「そうだね。アイスあとにしてビール買っておけばよかったね。買ってこようか?」
「いいよ、あとで!」
立ち上がりかけた優斗さんを慌てて引きとめる。
アイスって本当さっき買う必要なかったよなー。
さっきは昔のこと思い出してちょっとだけ、なんかアレな気持ちになっちゃったっていうか。
少し反省。
「そう? ああ、暑さで溶けかけてる」
アイスを持っていた優斗さんが呟いて自然と目を向けた。
生クリームはダレていてアイスはうっすら汗かいてるように下のほうに水滴が落ちかけてた。
「ほんとだ。俺先に――……」
食べようかな、と言いかけた言葉は消えた。
ぺろり、と優斗さんが舌を出してアイスキャンディーを舐めた。
生クリームと、アイス。
いや、うん。舐めるよな、うん。
「美味しいよ?」
「……う、うん」
おい、俺の頭の中どうにかしろ!!!
二十歳過ぎてバカすぎんだろ!!!
そうは思っても目が離せない。
白い生クリームが優斗さんに舐めとられていく。
「食べる?」
「も、もう少ししてからで」
焼きそばを食べるふりっていうか食べつつも目はしっかり優斗さんに止めてて。
「生クリーム全部食べちゃうけど、いいの?」
「うん……」
優斗さんっ、生クリームが口についてる!
と思ってすぐに優斗さんが気付いたようで舌で舐める。
で、アイスをまた舐めて。
いや、うん、アイスは舐めるよなー。
普段俺だって舐めるし。
うん……ああー! くっそー! さっき思い出すんじゃなかった!!
別に普通なはずなのに、浴衣姿の優斗さんと、そんでもって昔花火大会の日にしたエッチだとかいろいろまぜこぜになって……アイス舐める優斗さんがエロく見える。
「捺くん?」
どうしたの、と箸が止まってた俺に優斗さんが顔を近づける。
暗がりだけど微かにわかる、アイスのせいで優斗さんの唇が少し濡れてるってこと。
「……したい」
「え?」
「キスしたい」
さすがにヤりたい、なんて唐突すぎるし言わないけど。
でもいまマジでキスしたい。
優斗さんは一瞬不思議そうに目をしばたたかせて、すぐに顔をほころばせた。
「俺も―――」
いつだってしたいよ。
なんてことを、俺の耳元で囁いてくる。
人目だってあるっていうのに、至近距離で、ほんの少しだけ俺の耳朶に触れた唇は冷たくって、声は甘くて。
「家帰ってたくさんしようね」
そう笑ってまたアイスを舐めはじめる優斗さんに俺のミジンコ並みの小さい理性は崩壊した。
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