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また、ここで 5 side優斗
「あー! やばい、声枯れるかも!」
絶叫マシーンを6連続乗った。
捺くんが乗るときは絶叫しなきゃいけないからね、っていうから二人で他のひとたちよりもかなり絶叫した。
こんなに大声出したの初めてじゃないかってくらいにジェットコースターの頂上で叫んで、そこからずっと叫んで。
確かに声枯れそう。
「もっとガンガンいけると思ったのに結構疲れるね」
はー、と大きなため息つきながら捺くんが同意を得るように俺に笑いかける。
捺くんって―――初めて会ったときに驚いたけど、すごく綺麗な顔をしてる。
可愛い感じもあって、笑顔も男の俺でも見惚れてしまうくらいに魅力的だ。
「そうだね。俺も……やっぱり三十過ぎてるんだなって実感した。だってなんか身体重いもん」
同い年なのは意識的なもので、実際は一回りも歳が違う捺くんとオジサンの俺。
歩いてるだけで女の子たちが振り返るくらい綺麗な捺くんのとなりに俺がいていいのかな。
「そう? でも優斗さんは俺より体力あるよ、まじで」
ちょっとだけ本当に捺くんと同い年だったらよかったのにな、なんて考えてたら捺くんがやけに真顔で言ってきて「そうかなぁ」と苦笑した。
それからお化け屋敷に入って、観覧車に乗った。
ゆっくりと昇っていく観覧車から景色を眺める。
ついさっき行ったばかりのお化け屋敷や、たくさん乗った絶叫マシーンの場所を探して指さしてあれがすごかったとか楽しかったとかとりとめなく言い合った。
「せっかくの観覧車なのに、俺とでごめんね」
頂上近くなって外を眺めながらなんとなく言ったら、「なにが?」って不思議そうに返される。
「だって観覧車とかってデートとかで乗ったりすることのほうが多いだろうし。男の俺が一緒で申し訳ないなって」
捺くんならきっととても可愛い彼女がいるんだろうな。
目をぱちぱちとさせて捺くんは首を傾げて、そして笑った。
綺麗な笑顔で。
「いまデートなんだからいいんじゃねーの?」
今度は俺が目をぱちぱちとする番。
「えっ」
驚いてうまく言葉がでてこない俺に捺くんはちょっとからかうように目を細める。
「……捺くんってモテるんだろうね、すごく」
「なに急に」
「……別に」
だって男の俺でもドキドキした、なんてことは言えないから黙って景色を眺めることにした俺に、捺くんの吹き出す声が聞こえてきて顔が熱くなるのを感じた。
観覧車から降りれば、もう閉園時間だった。
「夜間もしてればいいのになー。やっぱり来るの遅かったな」
夏休みとかならもう少し長く営業しているのかもしれないけれど、まだ6月下旬だ。
「もうちょっと乗りたかったね」
「うん」
「でも楽しかったよ。来てよかった」
「俺も優斗さんと来ることができてよかった」
あっという間だった時間。
2時間もいれなかったけど、それでもすごく満足してる。
園内にもうすぐ閉園だというアナウンスと音楽が鳴っている。
それを聞きながら出口へとゆっくり歩いていく。
「ね、優斗さん。どこかで夕飯食って、あとちょっと寄りたいところあるんだけどいい?」
「もちろん。大丈夫だよ」
「よかった!」
実優の親友だという捺くん。
俺は友達の叔父さんでしかないのに、こうして本当に友人のように接してもらえるのが嬉しいし、一昨日初めて会ったなんて思えないくらいに傍にいて落ちつく。
その前までは―――ただひたすら、あの日から必死で前を向くことしかできなかった。
純粋にこんなにも笑って楽しのはあの日以来はじめてだ。
「ハンバーグとオムライス食いたいな」
名残惜しくゲートを出て遊園地の外に。
「俺もハンバーグ食べたいな」
遊園地でのひとときは終わってしまったけど、まだ今日は終わらないんだということに妙に浮足立ってる自分がいて可笑しかった。
***
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