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また、ここで 6 side優斗

捺くんが店を決めていいかって聞いてきたからもちろんと頷いた。 10年の記憶の誤差のある俺じゃどこがいいなんていうのもわからないし、捺くんが行きたいところがあるならそれで問題ない。 「ハンバーグの美味しいところ行こう」 そう言って捺くんが選んだ店は煮込みハンバーグが美味しいっていうところで、二人揃って同じものを頼んだ。 前菜にスープに、ハンバーグ。 落ちついた雰囲気の店内はカップルや女性客の方が多い。 大学の友達とはファミレスばかりで、普段食べるハンバーグよりもちょっと高級だ。 「捺くんはいつもこういう店くるの?」 綺麗な手付きでハーンバーグを切って食べる動作は妙に大人っぽく見えた。 「んー? 普段はファミレスとか安い居酒屋だよ。まぁでもたまに来るかな」 ちらりと俺に含み笑いを向ける捺くん。 「ここね優斗さんに連れてきてもらったんだよ」 「俺?」 「そう」 「へぇ……。やっぱり社会人になると美味しいものも食べるんだね」 30歳過ぎた社会人なら付き合いとかでいろんな店いったりするんだろうな。 接待とかもしてたりするんだろうか。 一応内定をもらっていた会社で働いているのかどうかはわからないけど美味しい煮込みハンバーグを食べてぼんやり考えていたら吹き出す声。 「え、なに。俺なにか変なこと言った?」 「いや。同い年な優斗さんは可愛いなと思っただけ」 片肘をついてクスクスと笑う捺くんに、可愛いのは捺くんの方だよ、と心の中で言い返す。 「……やっぱり捺くんってモテるよね」 男の俺に可愛いは不似合いだけど、でも女の子ならさらっと言われたら嬉しいだろう。 「それ二回目。俺モテそう?」 「うん」 「そう見えるってことは、もしかして優斗さんも俺にドキドキしたりした?」 車を運転しなきゃいけないからアルコールは頼んでない。 かわりにジュースを飲んでいた俺は吹き出しかけた。 むせてゲホゲホと咳き込む俺を捺くんが楽しそうに眺めてる。 「大丈夫? 優斗さん」 「う、うん。……捺くんってやっぱり絶対モテる」 三度目になる言葉を言えば、捺くんは大きく笑って、 「モテはするけど。でも俺は好きな人に好きでいてもらえればそれが一番だから。他はどうでもいい」 なんていうやっぱりモテそうな発言をした。 同時にちょっと羨ましく感じた。 そんな風に思われてる相手がいるんだなって、優しく目を細める捺くんに好きな人がいるんだろうと気づいたから。 俺もまたいつか恋愛できる日がくるのかな。 「……俺も捺くんみたいなひとと付き合えるといいな」 ぽつりと言葉が落ちて、ふと捺くんがぽかんとしてるのが目に入って我に返った。 「え、あ、いや、いまのは、捺くんがさっき言ってた好きな人に好きでいてもらえればっていうのが本当にそうだなと思って。だから、そういうたった一人のひとに出会えればいいなって……」 必死で言い繕う自分が恥ずかしい。なんでこんなに慌ててしまうんだろう。 捺くんは俺が言い終わるころには面白そうに俺を見つめてて、いたたまれなくて必死でハンバーグを食べた。 「実際、優斗さんこそモテオーラってか天然タラシぶり発揮してんだけどねー」 「え?」 「んーん。なんでもー」 捺くんがぼそぼそと何か呟いたけど聞きとれなかった。 聞きかえしたけど笑顔で交わされて、話は日々の生活のことに映った。 捺くんに聞かれるままに大学の友人たちのことや、まだ気持ちの整理がついていなかった姉さんのことなんかも話してるうちに食事は終わりコーヒーが運ばれてきた。 「おめでとうございます」 ウエイターが笑顔を俺に向けて俺の前にコーヒーとプレートを置いてきて戸惑う。 ケーキとフルーツが飾られた白い皿にはチョコレートでメッセージが書かれていて、それを読んで心底驚いた。

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