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ケーキと一緒に 〜メリクリ🎄〜

……本当に"アレ"していいんだろうか。 そう迷いながらの、今日はクリスマスイブ。 連休ということもあって、俺たちはホテルを取って宿泊。 いまは風呂上がりでルームサービスに頼んでいたクリスマスケーキが来たところだ。 生クリームデコのイチゴと生クリームがたっぷり使われたクリスマスケーキ。 「美味しそうだね」 「……うん」 美味しそうだけど、俺の緊張はマックスだ! 「捺くん。メリークリスマス」 にっこり笑って優斗さんがクリスマスカラーでラッピングされた箱を差し出した。 「ありがと! 俺もメリークリスマス!」 用意してたプレゼントを優斗さんに渡す。 「開けていい?」 「うん。俺も開けるね」 「うん」 俺からは……ネクタイとタイピン。 確か前もネクタイあげたことあったんだけど……。 いやでもすっげぇデザインがよかったから気にいってこれにしたんだからいいんだ! 「ありがとう。素敵だね」 優斗さんが本当に嬉しそうに微笑んでくれるから、ちょっと不安だったけどホッとした。 そして俺へは……。 「……かっこいい。けどこれ高いんじゃないの?」 時計だった。 シルバー色の腕時計。シンプルなデザインだけど地味ってかんじじゃなくて存在感ある。 はめてみてすっげぇぴったりくるっていうか。 「そんなに高くないよ。就職活動も本格化するし、社会人になってからも使えるようなのを選んだんだ」 「……ありがとう」 「気にいった?」 「うん、もちろん!! すっげぇ、いい!」 優斗さんに抱きついてお礼代わりにちゅっちゅする。 「俺も捺くんが選んでくれたネクタイすごく気にいったよ」 キスの合間に、すぐキスできるくらいに顔を近づけたまま優斗さんが目を細める。 「……よかった」 そしてまたキスして、散々舌を絡め合わせた。 それから――― 「とりあえず、先にケーキ食べようか」 優斗さんが俺の髪を弄りながらクリスマスケーキに視線を移した。 「……あ、あの優斗さんっ」 「なに?」 「照明落としてきていい……?」 「いいよ?」 優斗さんはきょとんとしながら頷いて、俺は赤くなりそうな顔を隠すようにして室内の照明を少し落とした。 ソファに戻ってクリスマスケーキを持つ。 「捺くん?」 不思議そうにしてる。 そりゃそうだよな。 いや、というかこれ本当に大丈夫なのか? 『せっかくのクリスマスなんだから、たまには違ったこともしないと。優斗もすごく感激すると思うよ?』 不安しかわいてこないけど、『絶対燃えるから!』って言葉を思い出して、気合を入れた。 「あの……優斗さん」 「なに?」 「……こ……っ」 「……」 「このケーキと……一緒に……俺のことも……食べて?」 言いながら必殺上目遣い!!で、俺は言い切った!! うわああああ、まじで恥ずかしい! っていうか、俺バカじゃねーの!? 「……」 「……」 あああ、やっぱり智紀さんのアドバイスなんて真に受けなきゃよかったあ! 『この前生クリームプレイしたんだけど、楽しかったよー』 なんて! 智紀さんは変態だからいいんだろうけど、俺たちノーマルカップルだし! あああ、やばい、優斗さんが固まってるー! 「一緒に?」 「へ?! あ、う、やっぱいい―――……っぅんっ」 さっきのナシナシ!って首を振ろうとしたら優斗さんの手がケーキに伸びてきてイチゴをひとつとったかと思うと俺の口に押し込んできた。 反射的に噛んで、甘酸っぱいイチゴの味が広がる。 「ッ、ン!!」 そのまま食べようとしてたらいきなり後頭部に手がまわされて唇を塞がれた。 俺の口の中のイチゴが優斗さんの舌に持っていかれる。 かと思ったらまた押し込まれて―――って、ふたりでキスしながら食べてる状態で。 苦しいし食べにくいし、なんか口の端から唾液とかイチゴの果汁とかめちゃくちゃこぼれまくってる。 ようやく食べ終えたころには軽く息があがって、心臓はバクバクだ。 優斗さんは濡れた口元を指でぬぐって、舐めて―――って、色気ハンパないんですが! 「ん、美味しい」 「……っ」 「一緒に食べていいんだよね?」 「……は、はい」 いや、俺が言ったんだけど! でも優斗さんはきっと乗ってこないと思ったんだけど、なんでこんなに積極的ー!? 焦る俺からケーキをとって、テーブルに乗せた優斗さんはまた一個イチゴを俺に咥えさせてさっきと同じように食べ始めた。 やっぱきつい、のにだんだん気持ちよくなってくるから不思議だ。 さっきよりはちょっと食べるコツもわかって夢中になってたらソファに押し倒されてバスローブの前をはだけさせられた。 「んん、っ……はぁ」 イチゴの味と優斗さんの味と、なんか全部合わさって頭の中がくらくらする。 俺に跨った優斗さんはケーキから今度は生クリームを指ですくうと……。 「……っ、冷たっ」 俺の胸にこすりつけてきた。 生クリームの冷たさと、ありえないところに塗られて身体がびくつく。 「美味しそうだね」 にっこり笑う優斗さん……だけどなんか、ちょっと怒ってるような? 「……あの……優斗さんまじでするの?」 「なんで? 捺くんから言いだしたんだよね」 「そ、そうだけど……」 「捺くん」 「なに?」 「これ、誰の入れ知恵?」 「へ?」 「捺くんが考えたプレイ?」 「……え……っと」 実はこれは……って実はもなにもなく智紀さんの提案だ。 この前クリスマスパーティしたときに、酔っぱらった智紀さんが最近恋人として楽しかった生クリームプレイを延々語りだして。 俺と優斗さんは付き合い長いし、たまには変わったこともしてみたほうがいいとか言われて。 ちょうどクリスマスだし、プレゼントの一環で俺込みでケーキを食べてみるとかなんて進められて。 (正直智紀さんの恋人くんいろいろさせられて気の毒だなぁとは思いつつ。そんなプレイ優斗さんドン引きしそうとか思いつつ) ナイナイって思ってたけど―――ちょっと面白そうかなぁなんて思ってしまった俺がいたのも事実で……。 「あ、あの、その……智紀さんが」 ぼそぼそっと言えば、優斗さんが笑いながらため息をついた。

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