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RED×BLACK 4
高校一年、初めて修悟が教育実習生に傾き、別れると言ったき初めてそう朱理は尋ねたのだ。
『別れる? じゃあクロは俺より佐々木先生のほうが好きだってこと?』
『……だから一目惚れだって言ってんだろ』
『だから、それは俺より好きだってこと?』
『はぁ?!』
『佐々木先生のこと好きになったけど、昨日も一昨日も俺とヤった?』
『……そ、それは』
『ちなみに佐々木先生はノンケだけど、いいんだ?』
『……んなのわかってる』
『告白してもうまくいかないかもしれないけど?』
『……』
『修悟の好きなセックスもできないかもな?』
思春期のころは若さもあり、ふたりは家が近所だということもあって頻繁に身体を重ねていた。
上か下かはそのときの気分次第。
『べ、べつにそんなの』
『俺は修悟とセックスするの好きだけど。というか修悟が好きだから別れるのは嫌なんだけど』
ベッドの上でしか呼ばない名前を呼ばれそのとき確かに修悟はうろたえた。
"好き"だとかいう言葉を直接聞くのは片手で数えるくらいだ。
そして突然率直に言われ耳が赤くなるくらいにはまだ純粋だったのかもしれない。
『……別に……俺だって……嫌いじゃないけど』
『それは好きってことでいいんだよな?』
『……そ、そうだけど』
『じゃあ佐々木先生のことは俺よりも好き?』
『……』
『修悟のタイプって女相手もそうだけど、年上の優しそうな人だろ? そういうのって憧れもまざってるんじゃないの』
『……わからん』
『俺は修悟が好き。修悟は?』
『……好きだけど』
『佐々木先生より?』
『……』
長い沈黙のあと迷うようにして修悟は小さく頷いた。
そして『なら別れる必要なんてない』という結論にいたり―――。
『俺以外にブレたお仕置き』
『はぁあ!?』
というわけで初めてのお仕置きは発動したのだ。
「あのときは可愛かったのに」
昔のことを思い出しながら程よく焼けた修悟の肌に手を滑らせる。
律動を止め抜くと修悟の身体を反転させた。
「ん……っ」
ずっと伏せていた修悟は少しの灯りだが眩しく感じたのか目を眇める。
汗ばんだ身体と朱に染まった頬。
精悍で男らしい顔が息を乱して快楽に歪んでいる事実に朱理は口元を緩めた。
「修悟」
言いながら脚を抱えて再び貫く。
「俺はお前のことが好きだ、けど」
お前は?
高1のときからこうして訊くのは何度目かの問いかけをゆっくり律動しながらする。
前立腺を狙いながら腰を動かしてやれば荒い息を吐き出しながらも修悟は舌打ちした。
「知る……かっ」
「知るか、って自分のことだろ。ほんと素直じゃないね、修悟は」
揺さぶるたびにきつく締めつけてくる修悟のナカに朱理の息も少しづつ上がり艶を含んでいく。
「ちゃんと言えたらコレ、外してやるから」
「……ッ……ぁ……く、そっ……ボケ…ッ」
コックリングに触れる朱理を修悟は睨みつける。
ボケ、と何度悪態ついたって結局同じ。
「修悟……、っ」
限界が近くなってきてるのか朱理の動きが速くなっていく。
少し乱れ掠れた声が落ち、その半身も倒れ込むように覆いかぶさってきて修悟の口を塞ぐ。
熱く絡み合わせる舌も、身体も、たとえたまにブレようが間違いなく余すことなく修悟のもので、朱理のものだ。
同時に上り詰めるように熱を上げていく。
「ッ、ン、ぁッ」
「しゅう……」
「ッ―――」
耳にかかる吐息とひどく甘く響く声に、何回目かの舌打ちをしながら修悟は朱理の首を引き寄せ、その耳元に噛みつきボソリ、となにか囁いた。
乱れた呼吸に混じる笑い声と、解放される修悟のもの。
あっという間に押し上げられ、数瞬もしないうちに修悟は自分のナカで朱理の欲が爆ぜるのを感じた。
そして自分も吐精し、後でも何度目かの絶頂に達したのだった。
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