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第5話「告白」*仁

   あき兄が、他の誰かと仲良くしているところを見せつけられるばかりなら、むしろ同じ高校に入らなきゃ良かったと思いながら、ずっと過ごした。  それが、余計に歪んだのは夏の終わり。  完全に部活を引退しても、あき兄は陸上部の彼女や仲間と一緒に居た。見かける度にすごく楽しそうに笑っている。  なんで、オレはこんなにいつも、あき兄ばかりなのに―――……。  なんで何も知らず、毎日楽しそうに――――……。  そんなの、当たり前の事なのに。  オレは、知られないように、バレないように暮らしてきた。  わざと彼女を家に連れて帰ったり、あき兄の前で彼女と仲良さそうに電話してみたり。 だから、あき兄が、オレの気持ちなんか知るはずはない。  あき兄は悪くない。知ってる。分かってる。  けれど、もう、耐えられなくて。  ――――……あき兄に、この気持ちを伝えよう。  この苦しさを、あき兄にも押し付けようと、思いついてしまった。  そしたらきっと――――…。  あんな風に、ただ、楽しそうには、笑ってはいられないはず。  そんな歪んだ気持ちが、胸を焼く。  どうせこのまま、一人で苦しんで、隠して進んだって、嫌な終わりしか想像できない。どう転んだって、おかしくなりそうで。やばくて。真っ暗で。  このままじゃ、こんなに大好きな人を、自分勝手に、心から憎んでしまいそうで。  だったら――――…  どう転んだっていいから。  あき兄を、好きでいられる内に、好きな気持ちを、伝えたくて。  好きな気持ちを全部隠したまま嫌いになって憎んで、そっちを伝えてしまう前に。  本当に、思ってる事を――――……  あき兄に、伝えたくなってしまった。  それが、どんな結末になったって。  ――――…… オレが、あき兄を、憎むよりは、マシだと。  その時の、オレには――――……。   何度、考え直しても、その結論以外、出せなかった。 ◇ ◇ ◇ ◇  その日は、テスト期間で、オレとあき兄は、午前中で学校が終わった。  十五時から母が和己を連れて歯医者に出かけた。買い物も寄ってくると言ってたから、夕方までは、帰らない。  家で二人きりになる時間があったら伝える。そう決めて、もう結構な時間が経った。  基本、母と弟が家に居るので、もう――――……今日しかないと、思った。 「……あき兄」 「……んー?……」  机に向かってるあき兄は、問題を解いてるらしく、間延びした答えをして、動かない。数秒待って。それでも、こちらを向かない。 「――――……彰」  初めて、あき兄を、呼び捨てにした。すると。少しして。 「……ん……?」  きょとんとした顔で、彰が、振り返った。 「彰、話があるんだけど」 「え。いいけど……何で、急に呼び捨て?」  別に怒る訳でもなく。  ――――……不思議そうな顔を見ていたら。  改めて、どうしても、伝えたくなってしまった。 「……好きだ」 「……え?」  彰が、ふっと首を傾げた。  オレの次の言葉を待って、何も言わない。 「彰の事が、好きだ」 「だからなんで、呼び捨て……ていうか、 好きって、何?」 「彰の事が好きで、おかしくなりそうなんだ」 「――――……?」  オレの真意を計れないのか、彰の眉が寄る。  椅子に座ったまま見上げてくる彰の手首を、掴んで、ぐい、と引き、自分に引き寄せた。 「……じん?」  これでも、まだ、ただ戸惑っているだけの、表情。  何も、伝わって、ない。 「――――……彰が好き。ずっと、ずっと、好きだった」 「――――……」  ぎゅう、と抱き締める。 「ちょ、待って――――……ごめん、仁、一回離して……?」  見たことのないような、彰の、戸惑った顔。  少しは……伝わったんだろうか。 「待って…… 好きって、何?」 「――――……オレ、彰の事が、好きなんだ」 「?――――……あり、がと……?」  きっと、まだ、半分も――――……半分どころか、全く伝わっていない。  彰の顔を見れば、それは分かった。 「――――……」  弟が、何を言いたいのか探りながら。  ただ、不思議そうに見上げてくる瞳。  彰のその目を、見つめたまま。  オレは、その唇に、唇を重ねた。  キス、しても。    彰は、ぴくりとも、動かなかった。  唇が、触れたまま。何回か瞬きをして。  ただ、じっと、オレの目を、見つめ返していた。  ゆっくり、唇を離した。 「――――……じ ん……?」  オレの名を呼んで、薄く開いた唇に――――……耐えられなくなって。  ぐい、とその肩を抱いて、腕の中に引き込んだ。

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