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第8話 「可愛い弟だった」*彰
仁、ほんとに、どうしちゃったんだろう。
――――……初めて、彰と呼ばれた日から。
好きだと、ずっと言い続けてくる。
……キスし過ぎ。
そんなに無理に引き離すのも躊躇われたし。
最初に拒まなかったのが、いけないのか。
……キス魔かよ……。
そう思う位に、キス、されてしまう。
仁に初めて会った日の事、オレは、覚えてる。
仁は3歳だったから、当然覚えてないらしいけど。
その日は、幼稚園に遅刻する予定で、会いに行った。
オレは、幼稚園に行きたかったから、最初は嫌だった。すごく嫌だったから、余計覚えてるのかもしれない。早く用事を終わらせて、幼稚園に行きたかった。
すごく天気の良い日だった。
青い空がキレイで、太陽が、眩しかった。
噴水の水しぶきが、キラキラ光っていた。
待ってたのは、一人の女の人と、めちゃくちゃ瞳の大きな可愛い男の子。会ってすぐ、手を繋いできた。なんだかめちゃくちゃ可愛かった。
その日は、少し顔を合わせるだけのつもりだったみたいで。少し遊んで別れようとしたら、仁が泣いた。オレも、幼稚園を休んで仁と遊びたいと言って、結局夕方まで一緒に遊んだ。
オレに懐いた可愛い仁が、弟になるかもと聞いた時。
――――……あんなに可愛い弟ができるんだ、と嬉しかった。
実際弟になってからも――――……ほんとに、オレのあとばっかりついてきて。ずっと、可愛かった。ずっと守ってあげようと思ってた。
小学生の時に和己が産まれた。赤ちゃんが可愛すぎて、和己ばっかり可愛がってたら、仁に拗ねられたりしたこともあったけど、そんなのも、余計に仁の事が可愛く思うだけだった。
ずっとずっと、仲良くすごしてきた。
仁の勉強を見てたのは、オレだし。鉄棒や縄跳びや遊びを教えたのも、オレ。剣道だけは、仁が自分からやりたがって、一人で始めたけど。別行動だったのはその時間位で。
公園で遊んでれば、2つ下なのに、オレの友達たちに混ざってきて、いつも一緒に遊んでた。
オレが先に中学に入った時は、もう遊べなくなるって、すごい寂しそうで、胸が痛かったっけ。2年遅れで仁も中学に入ってきて、また学校でも会うようになって……会うと、嬉しそうで、可愛かった。
中学生になっても、まだまだ可愛いなあ、なんて、思ってた。
特に覚えてるのは オレの卒業式。
わざわざ待ってた仁に、抱き締められたっけ。
その後、オレの高校を受けると言った仁の勉強をずっと見てきた。
受かった時は、ほんとに嬉しくて――――……。
最近、反抗期なのか、あまりオレと話さなくなったなーと、思ってた。
まあ、それも成長だし、その内きっと、反抗期が落ち着けばまた仲良くなれると、思ってた。
それが――――……。
あの日、突然キスされて、好きだと言われた。
……幼稚園から好きだって。
なんだそれ。
ほんとに意味が、分からない。
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