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第10話「親友」*彰

「……彰、お前、ほんとやばい。 どうしたのか、言え」  ついに。  元生徒会長。しかも、中学と高校の。  小学生の時からの付き合いの。  超切れ者の親友、片桐寛人(かたぎり ひろと)に、そう言われてしまった。 「……何でもない」  言ったら、すごい目で、睨まれた。 「そんなバレる、嘘、つくな」 「――――……じゃあ……嘘はつかないけど……話せない」  塾のない今日、仁から逃げるみたいに、家から徒歩十分の所にある、寛人の家で勉強させてもらっていた。  寛人は自分の机で。オレは、その後ろにあるテーブルで。  全然捗らなくて、小さくばれないようについていたため息が、モロバレていたみたい。 「静かにしてたって、分かる。 ため息ばかりで、気が散る。 お前の勉強もはかどらないだろ。悩んでるなら、言ってすっきりしちまえ」 「……むり……」  なんて言えば良いんだよ。  ……仁にキスされて、好きだって言われて、心乱れて、もう、どうしたらいいか分からないって?   絶対無理……。 「…麻友(まゆ)ちゃんと最近うまくいってないだろ」 「――――……うん、まあ……」  うまくいってない。  ――――……麻友とキスしようとすると……仁が、浮かんで。  キスすら、できなくなったオレに、麻友は、他に好きな人がいるのかと、聞いてきた。  そんなんじゃない、と言ってるんだけど――――……。    こんな状態で、うまくいくはずがない。 「うまくいってない事じゃねえだろ。そっちじゃなくて、うまくいかなくなった原因の方、悩んでんだろ」 「――――……」  ……うまくいかなくなった原因の方?  …………何その言い方。  知ってる……訳ないよな。 絶対知らないよな。  黙ってると。寛人は、すっごく嫌そうに息を吐いた。 「オレこれを、お前に聞く日が来ないといいなと、ずっと思ってたんだけど……」 「……?」  何それ。  聞く日がこないといいな??? 「……仁、じゃねえの?」  ぴきっ。  ――――……分かるはずない。知るはずない。  そう思ってるのに、寛人から漏れた仁の名前に、硬直するしかできない。 「……仁に、告られたかなんかか? 襲われた?」  もう唖然として、寛人を見上げるしかない。  この顔でもう、大部分肯定したみたいなことになってるんじゃないかと、気づくけれど、もう、後の祭り。 「――――……やっぱ、あいつ、そっちか……」  眉を寄せて。  寛人が、持っていたシャーペンを机に投げた。  椅子から降りて、オレの勉強道具をどけて、向かい側から、まっすぐ睨むように見つめられた。 「オレにとっても、知らない奴じゃねえし。――――……話してみな」  小学校から一緒だから、確かに、寛人は仁の事も知ってる。  寛人は習い事が多くて、あまり公園で遊ばなかったから、仁と寛人は直接は遊んではないけれど――――……。  小学生の頃、オレの教室に遊びに来てる仁の事も知ってるし、中学も高校も、何となくは目に入ってるらしくて。オレが、仁や和己の話をする事もあるから、寛人は、よく知ってはいた。  仁の方は、寛人の事を「彰と仲の良い生徒会長」としてしか認識してないみたいだけど。 「……寛人、なんかもう、オレ、お前、怖い。……何なの、超能力者かなんかなの……?」 「……怖いんじゃなくて――――…… つか、お前が鈍いんだよ」  はー、と寛人が、ふかーくふかーく、わざとらしく、ため息をついた。

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