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第11話「抵抗?」*彰
「仁の好きが、度を越してるのなんて――――……分かってただろ」
「……分かんないよ。兄弟だし」
「……ちなみにオレ、すっげー嫌われてると思うよ。仁に」
「え。なんで?」
「大好きなお前を、生徒会なんてものに引っ張って、ずっと独り占めしてる」
「――――……」
「しかも、中高と、二回も」
「――――……そんなの、言われた訳じゃないよね?」
「……視線がモロ言ってるから。睨みつけるみたいな視線」
「……」
「まあ……そういうのもあって、特に、オレは、嫌でも分かった訳。でもまあ、兄弟愛かもしんねえから、こういう話が出てこないで、普通にいけばいいなーと、思ってたんだけどな――――……て事で、もう大体分かってるから、話しちまえよ」
「――――……」
もういいか……。
言ったからって、広めるような奴でもなければ、バカにしたりもしない。
それは分かってるけど。
全く気付いてなければ、さすがにとても言えないけど、もう色々分かっててくれてるなら……話してみるか……。
そう思って。
端的に、こう言った。
「……好きだって、言われた。考え直してって、言ったんだけど……。今、仁が、キス魔になってる」
「――――……」
すぐには何も言わず。
寛人は、んー、と唸ったあと。
「拒否した?」
「……応えられないって、言い続けてる」
「キスは?」
「……止めては、いる」
「……止めてもされたら?」
「――――……また止めてる」
「……でも、受けてんのか?」
「――――……最初された時、意味が分からなくて……」
寛人は、まっすぐ、オレを見て。
じっと、考えてる。
「――――……殴り飛ばすよりも、色々考えてて動けなくて……最初受けちゃてて、なんかそしたら、どうしていいか、よく分かんなくなってて……」
「――――……」
「……でも何回も断って、無理って言ってるんだけど……してくる」
オレが、言い終えると、またしばらく、黙っていた。
「彰」
しばらくして、くいくい、と手招きされたので、え?とテーブル越しに前に乗り出したら。 顎を掴まれて、引き寄せられた。
「キスする」
「え……」
あっという間にキスされそうに近づいた瞬間。
オレは、寛人の胸を強く押して、後ろに退いた。
「……なっに考えて――――……」
「――――……ちゃんと、こうしたか?」
寛人はまったく動じず、じっとオレを見つめて、言った。
「オレはさ、お前と超付き合い長いし、生徒会とかずっと一緒にやってたし、家も近いし――――……信頼も、好意も、あるよな?」
「……あるよ?」
「……そのオレが、キスしようとしてさ。お前の反応は、これだろ?」
「――――……」
「てか、普通、男にキスされそうになったら、この反応だと思うけど……仁がしてくる時も、ちゃんと、こうして、抵抗した?」
「――――……」
……して、ないかも。
「最初は……ほんとに戸惑って――――……でも、こたえられないって、断ってたのに、忘れられない諦めないって言われて――――……そこからされるキスは……何かもうどうして良いか分かんなくて……」
「彰」
寛人の、少し強めの声。
息を吸って、言葉を待つ。
「彰が仁の事が好きで、そうなりたいって言うなら、オレは別に、否定はしねえし、応援してほしいなら、してやる」
「――――……」
「でも、弟が可愛いから、突き飛ばせずに、受けてるだけなら、やめとけ」
「――――……」
「……仁のは、そんなんじゃないだろうから」
「――――……」
「むしろ、期待させるのは残酷だと思う」
「――――……」
そっか。
――――……そうか。そうだよな……。
意味も分かんなくて、受け止めるだけなんて…
――――……そうだよな。
「――――……今なんか、思ってる事あるか?」
「………寛人はさ、仁の、好きがさ――――……本気だと、思う?」
「……さあ。分かんねぇ。 執着はすごいと思うけど。本気かどうかは、お前が分かるんじゃねえの?」
「――――……」
キスしてくる仁の――――……まっすぐな、瞳。
あれが、本気じゃない、なんて……。
言えない……かも――――……。
「――――……はっきりしな、彰。お前には、きついと思うけど」
「うん……ありがと、寛人」
「で、ちゃんとして、勉強するぞ。 受験生だろ、オレら」
「……うん」
「話せる時、ちゃんと話してこいよ」
「……うん」
話せるだろうか、ちゃんと。
――――……違う。話さなきゃ、いけないんだ。
オレは、兄貴、なんだから――――……。
仁の行く道、ちゃんとしてやらないと――――……。
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