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第12話 「彼女と別れた」*彰
学校から家に帰ったら、和己が遊びに出かける所だった。いってらっしゃいと送り出して家に入ると、母さんも買い物に出かけていった。
仁は、まだ帰ってきてない。
部屋に入って、カバンをかけて。シンとした部屋を何となく見回した。
――――……仁、帰ってくるかな……。
寛人と話して、仁と話そうと決めた日から、数日が経った。
和己や母さんが居て、仁と2人になるタイミングがないまま日が過ぎる。
その話せない間に――――……。
昨日、麻友と、別れることになった。
だんだん、彼女のことだけを考えられなくなってしまったのが、原因。
今までみたいにキスも出来なくなって、他に好きな人が居るのかと責められて。そうではないとずっと否定はしていたけれど、結局、すごく好きだった時よりは大分冷めてしまったことを自覚して――――……別れを決めてしまった。
最強カップルとか、呼ばれてたのにな。その頃が、なんだかもう、懐かしい。
ふ、と息を吐いたその時。玄関の鍵が開く音がした。それに続いて、階段を上がってくる足音。
「……彰」
仁が部屋に入ってきた。
――――……望んでた、2人きりだ。
でもなんだかな。
なんか――――……今じゃなくてもいいのに。
「彰……彼女と、別れたの?」
そして、その、触れてほしくない事を、なんで今、一番に聞くんだろ……。
「……って……情報早いな。どこから聞いたの?」
「今日、昼休み、噂になってた」
「――――……昨日の放課後なのに……皆ひまだな」
はー、とため息。
「なんで、別れたの?」
「……なんでって……気持ちのすれ違い、かな……」
「彰が、ふったの?」
「んー……そうだけど……麻友も、そうしたそうだったから……」
「――――……」
「え――――……じ……」
腕を掴まれて、ぐい、と引かれて、不意にキスされた。
「――――……っ」
後頭部を右手で押さえつけられて。深く、キスされる。
「……っだか、ら――――……じん……っ…」
制止しようとする言葉も、激しいキスに、奪われる。
「彰、好きだ――――……」
「――――……っ」
だめだ。
――――……だめだって、分かってるのに。
やっぱり、突飛ばすとか。
――――……できない。
弟が可愛い、じゃダメだ、という 寛人の言葉が脳裏に浮かぶけど。
――――もうどうしたらいいか、分からない。
「……彰が、誰とも付き合ってないの――――……嬉しい」
頬に触れた手のせいで、顔が動かせなくて、ただ、目の前の瞳を見つめ返す。
「……オレの事は……ふらないの?」
「…オレ、最初から――――……応えられないって……言ってるだろ」
「……でも、ずっと優しいじゃん」
「当たり前……弟なんだから」
「――――……っ」
仁は一瞬、すごく悔しそうな顔をした。
また、キス、される。
悩んで、別れを告げたけど――――……。
仁に、そこをすぐに突っ込まれるなんて。最悪……。
オレが――――……誰とも付き合ってないのが、嬉しいって。
……バカだな、仁。
「仁、ストップ……」
顔を、逸らして、唇を解く。
「――――……仁……オレが、前言った事、考えた?」
「……なに?」
「もう一回、よく考えてって」
「……考えてるよ、毎日」
「――――……そっか」
考えてるけど。
まだキス、してくるのか……。
何だかもう――――……頭が、うまく働かない。
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