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第30話 「普通の兄弟って?」

 目覚ましの音で目が覚めて、すぐに止める。 「――――……朝……か……」  ――――……そうだ。……今日から、仁が居るんだ。  なんだか一気に目が覚めて、起き上がった。  落ち着かず、とりあえず、着替えてしまう事にした。  塾講師のバイトの服装は、ネクタイやジャケットは無し、私服でもok。  ただ、毎回、「らしい服装」に悩むのも面倒なので、白か水色系のシャツに、黒か紺かグレーのズボンにしている。  白のシャツに袖を通して、紺のズボンと靴下。  そのまま洗面台で顔を洗って、歯を磨く。  歯ブラシをくわえたまま、お湯を火にかけると、口をすすぎに洗面所にもどろうとしたら、仁が起きてきた。 「おはよ、彰」 「ん……」  待って、と手を振って、洗面所で口を漱ぐ。 「仁、おはよ。 早いね」  口元をタオルで拭きつつ、洗面所の出入り口に立ってる仁を振り返ると。 「うん。――――……彰、その服ってバイト用?」 「塾の講師だから。いつも大体こんな感じ」 「なんか、すげー似合うね」 「え。……そう?」  一瞬ドキッとして。  ありがと、だけ返すと。 「……彰、朝コーヒーって淹れる?」 「うん。仁も飲む?」 「淹れるなら、飲みたいなと思って」 「コーヒー飲みたくて起きてきたの?」 「そうじゃないよ、いつも早起きしてるんだけど。でも、昨日のコーヒー美味しかったから」  仁のそんな言葉に、ちょっと嬉しくなってしまう。 「あれ好き?」 「うん」 「オレもあのコーヒー豆、やっとすごく好きなの見つけて――――……ってそんなゆっくりしてる時間は無かった。仁、朝ごはんは食べる?」 「……うん。食べる」 「分かった」  急いでキッチンに戻って、コーヒーの準備をしつつ、ハムエッグと、チーズトーストをそれぞれ焼く。  部屋に戻って、ハンカチとスマホを入れて、教材を確認。リビングに全部運んで、焼き具合を見ながら、腕時計をはめていると、仁が入ってきた。 「腕時計なんてするの?」  仁がパンをトースターから皿に移してながら、聞いてきた。 「うん。授業中スマホ見る訳にいかないし。教室にも時計はあるんだけど、念のためね。壊れてたら困るし」 「ああ。なるほど……」  コーヒーを淹れ終わり、ハムエッグを皿にうつす。  テーブルに全部並べて、椅子に腰かける。 「いただきます。 ……仁って、朝いつも早いの?」 「うん。早起きしてる。いただきます」   「何で?」 「別に――――…… 早く起きた方が色々できるから」 「へえ……偉いなー、仁」  ――――……なんて言ったら、ちっちゃい子褒めるみたいでおかしいかなと思って、一瞬黙る。  仁は特に何も答えず、食べてる。  ……どんな風に接すればいいんだろ。  あの件は全部忘れて、弟としてなんだから、  ――――…… オレは、兄として、弟、可愛がればいいのかな。  ……だけど、可愛い、とかいう感じでは、全然ないからなあ……。  ……対等に、接するべき??  普通の兄弟の、二才差って……。  どんな感じで話してるんだろ??  なんだか、もはや基準すら、よく分からない。

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