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第50話「寛人ってば」

 …………。  ………………。  なんで、オレが出されて、あの二人が、話をしてる訳。  全然、意味が分からない。  ――――……さっきの最後の会話だって、二年前の事だろ。  あれを最後にして、オレに出てけって、ほんと、一体何で……。  ――――……今、何、話してるんだろう。  ほんとに、何なんだ。  ああ、でも――――……とりあえず落ち着こう。  ファミレスから少し離れた所に看板が見えたコーヒー店で、カフェオレを買って、その前に置いてあるベンチに腰かけた。 「……――――……」  美味しい。はずなんだけど。  ……もう、二人が気になって、味がまた分からない。  ベンチに座って、カフェオレを啜りながら。  ぼーーーー、と、流れてく人波を目に映す。  ――――……仁と寛人って……。  今あんまり仲良くなさそうなんだけど……。  一度、どこかで噛み合ったら、超仲良くなったりすんのかな……。  あの時も、寛人は仁の事もよく分かってたよな……。  オレの方が全然、分かってなかった、気もするし……。  ――――……はあ。  何なんだろ。ほんと。  もやもや考えたまま、気づけば二十分が経っていた。  ……まだ、かなあ。  もうすっかり飲み終わった紙コップを捨てるために立ち上がり、そのまま店に行ってみようか、でもだめかなと思ったり。  仕方なくもう一度ベンチに座った瞬間。  電話が鳴った。ディスプレイの名前は――――……。 「もしもし、寛人?」 『お、彰。 仁は先に帰ったぞ。彰はどこに居る?』 「え。仁、帰ったの?」 『普通に話して普通に帰っただけだから心配すんな』 「――――……今店の前に行くから」  仁が先に出てくるなら、店の前に居ればよかった。   そんな風に思いながら店の前に戻って、寛人を待つと、少しして寛人が店から出てきた。 「寛人、お金払うよ。仁は払った?」 「今日はいいや。……それよりどっか人気ないとこある? 話そうぜ」  そう言われて。少し道を外れた所にある広い公園に寛人と向かい、端のベンチに座った。   「――――……なあ、寛人、ほんとにさ、何で……」  周りに人が居ないのを確認してから、隣の寛人にそう言いかけたら。 「分かってるって。悪かったよ、彰」  そんな風に、謝られて、勢いをそがれる。 「あいつ多分お前の前じゃ何も話さないと思ってたからさ。仁から彰に、席外せとか言いだしたから、ちょうどいいと思って」 「――――……何にも話さないって、何を話させたかったんだよ……」 「うーん……」  寛人は、ふー、と、ため息を吐いた。 「オレ的には――――……お前が仁と暮らしてて良いのか、確かめたかったんだけどさ」 「……なにそれ。大丈夫って言ってるじゃん……」  オレが言うと、寛人はちら、とオレを見て。  呆れたようにまた息をつき、頭をガシガシと掻いた。 「……あのなぁ。彰。……これ言おうかずっと迷ってたんだけど、やっぱり気になるから、言っとく」 「――――……なにを?」  寛人が言い淀んでる事なんか、正直怖くて、全然聞きたくない。  思わず、気持ち、すごく退きながら、そう聞いたら。 「仁がお前を好きだったのって、あの高校の、あの短期間だけじゃねーぞ? 分かってるか?」 「――――……」  ……いったい何を言い出すんだ。何が言いたいんだ。  眉を寄せながら、寛人の顔をただ見つめる。 「昔からずっと、お前をどういう意味で好きなんだろうとオレは思ってたし。でもって結局あれだったから、きっともう、仁は何年もお前の事が好きだったんだろうってオレは思ってる。お前はさ、仁が思春期でちょっとおかしくなって、あんな事したとか言ってたけど――――…… 絶対そうじゃないと思う」 「………」 「だから本当に大丈夫なのかって事を、確認しようと思った訳。もとはお前と飯食いに来ただけだったけど。仁も一緒に会えたから、ちょうどいいやと思ってな。それで、誘ったんだけど……」  ため息を、ついてしまう。  オレと一緒に居る、今の仁を少し見てれば分かると思うのに。  あの頃みたいに、熱っぽく見つめてくる訳でもない、触れてもこない。  こないだオレがおかしくなって泣いた時は、あやすように触れたけど、それ以上は一切ないし、オレについたキスマーク見たって注意される位だし。  ――――……もう今、仁からは一切そんなの、感じないのに。  寛人は、ずっと、気にしてたんだと思うと。ため息しか出ない。

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