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第117話「仁と」

    「……彰はさ」  しばらくして、仁が、言った。 「……彰はさ、考えてる事おかしすぎるから……」 「――――……」 「もうオレ遠慮しないから。彰が変な事を考えられないようにしてく」 「……仁……」  強い、まっすぐな瞳。どく、と心臓が弾む。  なんか……オレ。仁のこの瞳が、好きなのかも。  何なんだもう。  カッコよく、育ちすぎ、なんだけど……。  ……何なんだ、ほんとに……。 「……彰……」     名を呼ばれて、唇が、重なって。  舌がぬる、と挿しこまれる。 「……っ、ん……」  ……でも、ほんとに…… いいのかな。  このまま進んで……やっぱり男無理とか……なんないのかな……。 「……抱くよ、彰」 「――――……」  仁を見上げて、頷けずに固まる。 「……頷いてよ」  触れそうな位近くで、仁が見つめてくる。  どうしよう。  ……こんなにキスしちゃったけど。  ほんとにいいのかって……。  ……ほんとに、男同士で、いいのかって……。  仁にそんな事させて、いいのかって、  そんな気持ちが、また最大限に膨れ上がってくる。  どう、しよう。  キスだけならまだ戻れるかな。  でもオレ、仁と離れたくないって思ってるし。  だけど……体、繋いでしまっていいのかなって、思うし……。  ていうか、仁、ほんとにオレと、できるのかなって心配にもなるし。  自分の中の、ぐちゃぐちゃで、まとまらない思いがひどすぎて、仁に何も答えられずにいると。不意に仁が体を起こして、オレをまたぐようにしたまま、じっと見下ろしてくる。 「……何考えて、黙ってるのか知らないけどさ」  言いながら、仁は、着ていたTシャツを、脱ぎ捨てた。  綺麗についた筋肉。良い体してるのは服の外からでも分かってはいたけれど、こんな風に下から見上げると。ほんとに、ドキドキしてしまう。心臓の音が、うるさすぎる。 「……頷かなくてもするから。オレがどんだけ彰を好きか、分からせる」  言いながら、頭の横に両手をついて、仁はオレを囲う。 「……っ」  もう、かけらも可愛い弟じゃない、完全に男の顔でそう言われて。  瞬間的に、体が、熱くなる。  ……やば……。  心臓のドキドキが、半端ない。  ゆっくりキスされて。  そのキスを外しながら、仁の手が、オレのTシャツの裾にかかった。 「……脱がせるよ」  言われるがまま、抵抗せずに脱がされて。  見下ろされて、胸に手を置かれた。 「あのさ……彰が頷かなくてもするけどさ……でも……」  まっすぐ、見つめられる。 「……やっぱり、オレとしたいって聞きたい」 「……っ……」 「……オレとしたいって、言えよ、彰」  そんな言葉に。胸が締め付けられて。  ぎゅ、と瞳を閉じてしまう。  なんかもうオレ……。 「……仁……」  仁の首に手をかけて、ぎゅ、と抱き付いた。

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