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第118話「したかった」

 抱き付いたまま。何も言えないまま、数秒。 「……彰……?」  仁に呼ばれる。 「……オレ……」  思い切って、声を出した。   「……オレ……ずっと……仁と……したかった……」  ほんとは、高校生のあの時。  ……心のままに、動けてたなら、  ずっとキスして。抱き合って。……ずっと、一緒に居たかった。  今こうなって、あの時の気持ちが、やっと分かった。  色んな事考えて、そんなのはダメだって、思わないで居られたら。  何も考えずに、仁への想いだけなら、もう、ただ、好きだった。  好きだったから。  彼女ともキスできなくなって、別れて。  仁のキスを、拒めなくて。  ずっと、怖くて、ずっと、自分の気持ち、認めずに、  ずっと、逃げて。 「……ずっと逃げてて……ごめんね……」  少しだけ、しがみつく力を緩めて、仁の顔を見上げた。    「……は、何それ……ずっとしたかったって……」  仁の手が顎を捕らえて、すぐに唇が重なってくる。  舌が深く挿しこまれて、上顎をなぞられる。 「……ン…………ん……っ……」  仁がするキスは、熱っぽい。  気持ち全部、キスにのっかってるみたいな。  ……激しすぎて。  ……熱い。    しがみついた手を解かれて、ベッドに押しつけられる。   「ずっとの分……しようよ、彰」  そう言われて。  顔に熱が走った瞬間、また、口を塞がれる。 「……っん……っ……」  お互い、息が、荒い。熱い。  手首を掴んでる仁の手も……ものすごく、熱い。 「……なんかオレ……興奮しすぎて、ヤバい……」  仁が熱を持て余すみたいに、はあ、と息を吐きながら、そう言った。   「……っ…… オレも……」 「……」  こんな、時なのに。  熱い欲情に支配されてしまいそうな、こんな時なのに。  仁は、ふ、と瞳を緩めて、嬉しそうに笑った。  優しい笑みに、胸が、締め付けられる。 「仁……好きだよ……」  想いが溢れすぎて。   つい、また、そう口にした。  そしたら、仁は、一瞬目を大きくして、オレをまじまじ見つめて。   「……はー……これ以上、煽らないでよ……」  ため息の後。  角度を変えながら、何度も繰り返しキスされる。  舌が、しびれてるみたいで。  噛まれると、ゾクゾクして、全身震える。 「……じ、ん……」  ほんの少しも、離れたくなくて。   ぎゅ、と首に、しがみつく。

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