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第126話「無理」

 なんか、仁、やばい……。  ……仁がヤバいのか、オレがヤバいのか。  どうしよう、なんて思いながら、水を飲んでいた時。 「…彰、彰、彰」 「……んん?」  三回も名前呼ばれましたたけど。 …すごい、笑顔がキラキラしてますけど。  隣に立った仁に、内心退いてしまう。 「一緒に寝よ」 「……いや……」 「ん? 嫌?」 「嫌じゃなくて……いや、あの……オレ一人でゆっくり寝たいかも……」 「は? 無理無理」  ぐい、と腕を掴まれる。 「絶対一緒に寝る」 「……あの……」 「うん?」 「……明日にしない?」  退きながら言ったオレに、仁は、ぶんぶんと首を振った。 「無理」 「無理って……」  オレが無理だってば。絶対、眠れないってば。 「今日はもう絶対何もしないから。約束するからさ」 「――――……」 「早く寝よ?」  近くにいるだけで、今、ヤバいんだけど。  絶対分かってないよね…。  はー。  どうしよ。 ……それでも、こんなにまっすぐ見つめられると、拒否しきれるはずもなく。 「……触んない?」 「え。いや。……抱きしめたいけど」 「…………」  絶対眠れないって。  黙ってると、仁がオレをのぞき込んできた。 「後ろから抱き締めるだけにするから」 「――――……」  じっと見つめられる。  ……うう。可愛い。  ダメだこれ。 「……絶対だよ?」 「うん、絶対」  オレの言葉を了承と取った仁が嬉しそうに、オレの手を引いて、歩き始める。  リビングの電気を消して、仁の部屋に一緒に入る。電気をつけずに、そのままベッドの所に連れていかれる。 「彰、ここ、寝て。あ、シーツ変えたからね」 「……あ、うん」  言われるまま、仁のベッドに上がって、奥に入る。 「彰、向こう向いて寝て?」 「ん」  仁に背を向けて、横向きに寝ると、すぐに仁が後ろに入ってきた。  それだけで、めちゃくちゃドキドキして。  だ、めだ。どうしよう。  オレ、今まで仁と、どうやって生活してたんだっけ。  ちよっと前までは、普通に一緒に暮らしてたのに。 「彰」  ――――……ぎゅ、と抱き締められる。 「……苦しい?」 「…うん」  物理的には苦しくないけど………少し、離れて欲しい。  そう思って頷くと、少しだけ腕の力が弱まる。 「……これくらいは?」 「…………もうちょっと、離れて」 「……んー」 「……………?」 「……彰、オレに、触られたくない?」 「……違うけど……」  ……言えない。  ドキドキしすぎて、やばいなんて。  でも触られたくないって訳ではないし。どうしよう。 「彰、すっげードキドキしてるね……」 「――――……」  クス、と仁が笑う。  …………バレたし。  ……まあ、分かるか。  仁の手、オレの胸の上に、置かれてるもんね……。  触っただけでも、すごくのドキドキしてるの、分かっちゃうよね。

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