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第132話「いつもいつも」※

 マンションの部屋の鍵を仁が開けて、ドアを開けてくれた。  オレを先に入れて、仁が後から入ってくる。  オレは先に靴を脱いで玄関に上がりながら電気をつけて、仁を振り返った。 「……仁」 「ん? ちょっと待って、靴脱ぐ」 「うん」  素直に頷いて待っていると。  仁は靴を脱いで揃えてから、振り向いて、ふ、と笑った。 「ん、何? 彰」  真正面に向かい合って、少し下にあるオレの顔を見つめてくる。 「……仁」  仁の首に、腕を回す。驚いた顔をした仁を、ぐい、と自分の方に引き寄せる。少しバランスを崩した仁の手が、オレの後ろの壁についた。  首に抱き付いているオレを、仁が壁に囲っているような形。 「……どうしたの?」  仁の瞳に、熱が灯る。 「……誘ってんの?」  至近距離で囁かれて、オレは仁をまっすぐ見つめた。 「仁。……大好きだよ」 「――――……」  オレが言った瞬間、仁の唇に、唇を塞がれる。壁に背を押し付けられて、全く動けない状態で、上向かされて、深く重なる。 「……ん……っ」  最初は抑えようとしていたのに、どうしようもなくて声が漏れる位、キスが激しい。 「……っふ……ん、ぁ……」  誘ったのは自分だけど。  ……きつすぎて、息が、うまくできない。  オレはどうしてか少し震える指を、仁の頬に触れさせて、撫でた。 「……仁……」 「ん……何……?」  仁が少しだけキスを外すと、は、と熱い息が漏れて、それに惹かれるように近づきながら。 「……仁は? 好き……?」  オレがそう聞くと、仁は、オレの頬に触れて。好きに決まってる、と呟く。  想いが、溢れ出るみたいな、言い方で。 「……彰……」  仁の手に両頬を挟まれて、まっすぐに見つめられて、オレはただ、その瞳を見つめ返す。  仁は、少し眉を寄せて、目を細めた。 「……オレを煽ると……ほんとにヤバいけど……」 「うん……」 「分かってンの?」 「……うん」  分かってる。  心の中でそう思いながら、仁の首にもう一度ちゃんと腕を回して引き寄せて、仁の唇に自分の唇を重ねさせた。 「……あきら……」  唇の間で、熱っぽく呼ばれて。  オレの背中に回った仁の手に、苦しい位抱き寄せられて、唇が深く重なる。 「……っん……」  仁の舌が絡んで、強く擦れる感触に、体の奥が、ゾクッと震える。 「……ン――――……ン、ふ……」  息もうまくできないような、熱いキスに、クラクラして。   「……彰……」  あっという間に、「弟」じゃなくなって、「男」になる仁に、飲み込まれるみたい。  熱っぽく名を呼ばれて、頬に触れる手が熱くて。 「すっげぇ好き……」  少しだけ離れた唇の間で、仁が囁く。  心の一番奥に、届くような気がして。  オレは、急に泣きそうになって、目を細めて、仁を見つめ返した。 「――――……仁……」  どうして、こんな風に好きになったんだろうって。  冷静な時には、たまに思うことが、まだ、どうしても、あるんだけど。 「……じん……」  オレが、ぎゅ、と仁に抱き付くと。  一気に体温が上がったみたいに、熱くなった仁が、不意にオレを抱き上げた。  仁の部屋のベッドにオレの背を沈めさせて、その上に跨ぐように、押し乗ってくる。 「……あー、もう、無理――――……」  服を脱ぐ時間すら惜しいみたいに、少し乱暴にシャツを脱ぎ捨てて。  そのまま、覆いかぶさるみたいに、口づけてくる。  どうして、とかは思うけど。  もう、かけらも否定できない位。  仁が好きで。  本当にいつもいつも、愛しいって、思う。

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