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第134話「毎日」
あの後、二人でシャワーを浴びて、髪を乾かしあってから、寝る準備をして仁の部屋に入った。
「あ、そうだ。彰、シーツ剥がしてくれる?」
クローゼットを開けながら、仁が言うので、「うん」と頷いて、オレはベッドに近付いた。
……行為の跡。
ちょっと、恥ずかしいなと思いつつ剥がして、洗面所で軽く手洗いしてから、洗濯機に突っ込んだ。部屋に戻ると、仁がシーツを換え終えていて、ベッドに座ってスマホを眺めていた。
「明日のバイト 、一時間早く入ってだって」
「あ、そうなんだ」
仁の隣に座って、じ、と顔を見つめる。
「……彰?」
なんか仁は今、普通に座ってるだけなのに。
なんでこんな、ドキドキする位、カッコよく見えるかなあ。
……まあ見えるんじゃなくて、カッコいいんだと思うけど。
そのまま、ぎゅ、と仁に抱き付いてみた。
すると、彰?とまた名を呼ぶ声。笑いながら。
スマホがベットに置かれて、そのまま、抱き返される。
「――――……はは。かわい。どーしたの?」
ぎゅ、と抱き締めてきて、仁が笑う。
「今日さ、片桐さんと三人、楽しかったね」
「……うん。なんか、仲良しだよな、二人」
笑いながらオレが言うと、仁も、うん、と頷きながら笑う。
「……まあ昔は、嫉妬してたから嫌いだったけど」
「それって何で?」
「いっつも彰の側に居るからに決まってんじゃん」
少し離れてオレを見ながら、むっとしてる仁に、クスクス笑ってしまう。
「オレに何の感情もなくても、ダメだった?」
「ダメだね。……つか、側に居るっていう事で、無理だった」
「……中学ん時?」
「中学も高校も」
仁が苦笑いを浮かべて、そう言う。
オレは、ぐい、と仁を引いて、二人でベッドに横になった。
向かい合ったまま、ぎゅ、仁の首に抱き付いた。
「……長いよね。中学からとか」
そう言ったら、仁はクスッと笑った。
「違う、小学校もだよ」
「……長すぎ」
「うん。すごいよね。つか、ちょっと怖いよな。……自分でもそう思う」
オレは、背に置かれた仁の手に、ぎゅっと引き寄せられる。
「叶ったの、奇跡だなーと思ってるよ」
「――――……」
奇跡、かー……。
……そうかも、と、思って、オレも自分から、仁に更にぎゅっと抱き着く。
「……なんかそういえばさっき、すごい可愛いこと言ったよね、彰」
「……? 何?」
「オレのこと好きすぎて死にそうとかなんか……言ってたよね」
「――――……」
……ちょっと頭麻痺してて。思わず出てしまった言葉。
でも、ちゃんと言ったことは、覚えてる。
「……う、ん。……ごめん、あれに、触れないで」
「何で?」
笑いを含んだ声で聞かれて、少し考えてから。
「……照れる、から」
そう言ったら。仁がクスクス笑うので、抱き締めてくれてる仁の体が揺れる。
「……もう一回、言ってほしいけどな」
「……」
オレが黙っていると、仁は、ふ、と笑って。
「言って?」
少し離されて、頬に触れた仁に、じっと見つめられる。
言わないと、このままだなと悟って。
「……だから……毎日……好きだと思ってるよ」
「んー……? なんか……かなり違うんだけど。死にそうとかは?」
「――――……」
そんな素面で言える訳ない。そう思っていると。
クスクス笑う仁は、頬にキスしてから、オレを抱き締めなおす。
「しょうがないな…… 許してあげるか……」
耳元で囁かれる、優しい仁の声に。
ふと、微笑んで。そのまま、仁の首に腕を巻き付かせた。
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