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第3.1話

 落ちていく体が、下から吹き上がる風圧で一瞬止まる。  ・・・・・3、2、1、再び落下するその衝撃に意識を取り戻した僕は、出来ればもう一度気を失いたいと思った。  気を失う前は真っ暗で先が見通せなかったけれど、目測4、5m程先、落ち行く場所に眩い光が広がっている。恐らくマンホールの終着点だ。  いよいよ最後の時。  途中意識を失ったとは言え、かなりの深さを落ちているはず、このまま回避行動が取れなければ、地面に打ち付けられて「サヨウナラ」だ。  どう考えても今の状況を抜け出すことも、死を回避する事も出来そうに無い。  で、あれば少しでも楽に「あの世に」行きたい。 「南無阿弥陀仏、御陀仏安楽、与露死苦~」  しょうも無い、だけど切実な願い、いや精魂込めたお呪い(まじない)を胸に、僕は光り輝く死の(あぎと)に飛び込んで行ったのである。

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