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第3.9話

 突如、魔方陣の中央に現れた光球を認識したアルディーンは、咄嗟に玉座の前に立ちはだかる。 「ディー、何があった?」  アルディーンの背に庇われたものの、直ぐに玉座から立ち上がった兄が呼びかける。 「どうやら目くらまし程度の術は使えたようですね。ですが、これ以上の動きはないでしょうから、兄上には一旦中座頂いたほうが・・・・・」  王の身に万が一があってはならぬと進言するアルディーンの声に、アルリースの驚愕の声が被る。 「ディー、アレは!」  アルリースの促す先、先ほどアルディーンが確認した光球と思われる物が、今はその形を変え、不気味に伸び縮みしていた。  魔術師の目くらまし、悪あがきであったとしても、状況が解らぬ限り兄の身を守る事が優先である。事態の掌握含め、聖女召喚(この件)で今後起こる全てをアルディーンは引き受けると覚悟を決める。 「リー、ここは俺が納めるから、控えの間で待ってて」  思わず兄の愛称で呼びかけるアルディーンに、 「いや、ディーお前にばかり負担を掛ける訳には」  いつもその身を犠牲にするような弟を引き留めようと手を伸ばしたアルリースであったが、「ユリウス、王を控えの間へ」と告げるアルディーンに従った近衛隊長に腕を引かれる。 「陛下、こちらに」 「待て!ユリウス」  王の忠実な騎士であるが故に、王の身を守る事が第一であるユリウスに、半ばきひきずられるようにして、兄が連れ出されるのを見てアルディーンは安堵する。 「兄上さえ無事であれば、私に案ずる事はない。あとは・・・・・」  呟いて振り返ったアルディーンの目の前に現れるのは、吉となるか、凶となるか。  いずれにしろ、己が全てを受け止めると、改めてアルディーンは心に誓うのであった。

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