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第3話 はじまり3

「ならば、昔のように、ここに挨拶をしてくれ」  そう指し示されたのは、少し赤みが差したルーク様の頬だった。  ……なぜ? 思わず疑問の声が、漏れそうになったが、圧倒的強靭な精神力でねじ伏せた。 友人といえど、相手は王子だ。命令には逆らえない。 「…はい」  少し身体をルーク様の方に傾けて、そのまろい頬に優しく唇を寄せた。ほんの少し触れた程度だったが 「……んっ」  自分の声ではない艶めいた声が聞こえてきた。唇を離すと、より一層赤くなった顔で、トロンとした表情をしたルーク様がいた。 ──ルーク様、ちょっと色気が凄すぎないか……?  いつもとは違うルーク様の様子に、俺もなんだか鼓動が激しくなってくる。  それでもルーク様は、ふるふると頭を振ると、 「……違う。ここにも」  と、今度は額を示した。 「はい、もちろんです」  ルーク様の頭に右手を軽く添えると、左手で金色の髪を撫でつけ、つるりとした陶器のような額に口づけた。 「……ふぅ〜~」  数段、艶めかしさを増したルーク様は違うと言って、鼻先を示した。すらりと伸びた鼻先にチュッとキスをすると、ルーク様の顔が真っ赤になってしまった。 「……だ、大丈夫ですか? ルーク様、お顔が真っ赤ですよ」 「だ、だいじょうぶだ。ここも違ったようだ。最後はここだ」  そうして示されたのは、桜貝のような慎ましい唇だった。  あえて弁解させてもらえるなら、普段ならきっと唇になんて、触れたりしない。絶対。  でもこの日は、なんというか……ルーク様の色気……? が凄くて、それでいて反応が可愛らしくて……。  目を閉じて、キスを待つルーク様は、腰がズドンと重くなるように感じるほど綺麗だった。そして俺の理性を試しているのかと疑うくらいに、ピンク色の唇は薄く開いていて、どうぞ奥へ入っておいでと言わんばかりに誘っている。  俺はゴクリと唾を飲み込んだ。  ──ルーク様が可愛すぎるから、俺なんかに襲われちゃうんですよ……?  心のなかで呟いて、美しい顔に向けて俺は意識を集中させた。

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