2 / 53
第2話
「なんて小さな体なんでしょう。このようなか細いお体で、勇者様は世界をお救いになられたのですね」
トクトクトクっ
「勇者様が魔王様を倒されて、世界は平和になりました。これからは、私が勇者様をお守り致します。ご安心下さい」
トクトクトクっ
早鐘を打つ左胸がうるさい。
「どうか私に全てをお委ね下さい」
「ひゃう」
「おや、また奇声が出ましたね。キスの後、奇声を発するのが人間の文化なのでしょうか」
プルプルプル〜
だって、だって、だって!
「突然キスするから!」
「ご挨拶ですが」
「キスは挨拶だけど、挨拶じゃない」
「仰る意味がよく分かりません。たかだかお目覚めに頬に、心落ち着くおまじないに額に唇を触れただけですよ」
「それがキス!」
ふぁさんっ
シーツの波がざわめいた。
抱き寄せられて。抱きしめられて。
厚い胸板に 頬がぎゅっと押しつけられた。
「ほんとうのキス、教えてあげますよ」
星影に輝く月のような瞳が近づいてくる。
トクトクトク
トクトクトク
「勇者様……」
「ストォォーップ!」
ともだちにシェアしよう!