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第15話

 見上げた視線が影をとらえるより早く、光が突き刺した。  窓から差し込む朝日に反射した、氷の矢。 「詠唱なしの高次氷結魔法か。だが……」  声が低く笑う。 「僕には効かない」  バリンッ  喉元深く突き刺したかに見えた、太く厚い氷の矢が割れた。  キラキラ、朝日に輝いて消えていく。 「壱の柩、弐の柩、深淵の炎を氷に侵して燃え焦がれよ。参の柩、地を穿て。四の柩、天より降りよ……」  無詠唱の魔法は攻撃のためじゃない。 (この詠唱時間を作るために) 「四方の柩。眠りの神。悠久のいざない、まどろみ墜ちる夜半の雪。塵芥になりて涙を奏でる」  これは、氷魔法最大の呪文!  でも。だけど。 「待って!」  違うんだ。  結界を破った声の主からは感じないんだ。 (魔力がなくても不思議と感じ取れる)  結界を破った声の主は…… 「邪悪じゃない」  結界は破られた。でも。 「俺達の敵じゃない」  確証はない。けれど。  オルフェを今、止めなければ後悔する。  敵意は感じない。  不思議と懐かしい……感覚。  呪文の詠唱者は、呪文を通して精霊と交信する。  だから俺の声は聞こえない。  でも、オルフェなら…… 「オルフェ!」  きっと俺の声が届く。

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