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第16話

 ……フゥっと、唇から吐息が木漏れた。  呪文を唱える声が止まる。  声が届いた。 「あなたという人は……」  唇が細い溜め息を紡いだ。 「ご存知かと思いますが、呪文とは呪詛。精霊の力を行使した呪いです。詠唱を途中で放棄すれば……」 「ごめん」 「あなたに呪詛がかかる事だってあります」  オルフェの魔法が俺を襲っていたかも知れない。  魔力のない俺には、当然、魔法を防ぐ術がない。  オルフェが講師していたの行使していたのは、氷結最大呪文。  途中でやめた魔法が、俺に返ってきていたら……ゾッとする。  けれど。 「ありがとう」  オルフェは俺の意思を尊重して、呪文を放棄してくれた。 「邪悪でない事は分かっておりました」 「えっ」  じゃあ、どうして? (オルフェは攻撃を) 「彼に邪心はありません。しかし彼は、下心ありです」  ………  ………  ……… 「………」 「………」 「えええーーッ!!」

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