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第28話
絶対不可侵の秘密だったんだ。
俺がLv.1に戻ってしまった事を知っているのはオルフェだけ。
王様はこの事を知らない。
でも……
「『白夜の咆哮』が使えないという事は、君が勇者でないという事か。いや、一応は使えたか。静電気だけど。これは、どういう事なんだ」
「ごめんなさい、王様。実は、俺……」
ずっと王様を騙していました。
魔王を討伐してから……うぅん。
「本当は魔王を討伐していないんです」
「えっ、しかし君。人を襲う魔物は出なくなった。人間と魔族との和平も順調じゃないか」
「それは……」
「私が脅したのですよ。勇者様の剣が今まさに魔王様の命を奪おうとした瞬間、『魔王様を討てば、私があなたの命を奪い、この世の人間全ての命を奪い、世界を闇に落とす』と。
勇者様は傷つき、私と戦う余力はありませんでした。世界の人間全ての命を人質に取れば勇者様の選択は言うまでもないでしょう」
「魔軍宰相が取引を?」
「えぇ。魔軍次席としては当然でしょう」
「嘘だな」
「なぜ、そう思われますか」
「僕の勇者は脅しには屈しない」
「人質の中には、あなたの命も含まれています。勇者様はあなたも見殺しにすると?」
「そんな事はしないよ。僕の勇者は優しい子だ。そして強い子だよ。どんな状況に陥っても諦めない。そして、未来への道を拓くのが勇者だ」
王様の蒼い眼差しが静かに降りた。
「魔王を討たなかったのは、君の意志だね」
「オルフェの……魔軍宰相としての取引もありません」
オルフェは俺を庇って嘘をついた。
「オルフェは魔王討伐戦に参戦していません。俺とオルフェが出逢ったのは、戦いの後です」
真っ直ぐに王様を見た。
「魔王を討たなかったのは、俺の意志です」
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