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第4話
「ふーん。ちょっと意外だけど面白そうだな。」
「でもそれってバイト辞めるってこと?日高くんに会えなくなるの寂しくなるなあ。」
「蟹江先輩。」
日高の肩に触れながら話しかけて来たこの人は蟹江雅史先輩。他大に通う2個上の先輩だ。バイトで良くシフトが被り日高に良くしてくれるこの先輩が、日高は結構好きであった。
「蟹江先輩、日高を口説くのやめてくださいねえ?純粋なやつなんだから。」
「だからこそいいんじゃないか。でも日高くんは全然僕に靡いてくれないんだよ。」
「そうですね…すみません。」
とりあえず日高は申し訳なく思い謝ると、森田も蟹江先輩も可笑しそうに笑った。
そこて冗談であったと気づき、冗談に対しての上手い返しが出来ず、日高は赤面してしまう。そんな日高の頭を蟹江先輩は撫でていた。
「ほんと蟹江先輩は日高好きですね。男だったらこういうのがタイプですか?」
「うーん、そうだねえ。僕あんまりタイプってないんだよね。でも日高君は可愛くて好き。」
「それはありがとうございます。俺も先輩として蟹江先輩が好きです。」
「ふふっ。嬉しいなあ。」
蟹江先輩はバイだ。それは隠すこともしないからバイトのみんな知っている。それについて風当たりが強くなることもあるだろうに、蟹江先輩は自分を偽らない。そこを日高は尊敬していた。
日高は自分が男の人が好きだということを世間に決して言えることはないと思っているからだ。
だけどこの性癖は蟹江先輩だけは知っている。というかバイト初日にバレた。基本的に嘘がつけない日高は目を泳がすだけしか出来ず、あっさりと言葉のない自供をしてしまったのだ。
「あ、そろそろ俺休憩明けるわ。じゃあ先に行ってますね!」
「ああ、また後で。」
森田は急ぎ足で休憩室を去っていった。それを日高と蟹江先輩が見送る。
その瞬間に日高のスマホが鳴った。
見ると櫂からのLINE。今日会えないか、の文字だった。
どんな内容で会いたいと言ったのかは分からないが、今日も櫂に会えるという事実だけで日高は幸福を感じた。
「日高君、何かいいことあったでしょ?」
「いいこと、ですか…」
「顔に出てるよ。君がずっと片思いしてる彼、のことかな?」
「…はい。今日会えないかって。」
詳しい話をするのが気恥ずかしく、要点だけを日高は伝えた。それで察しのいい蟹江先輩はなにかを感じたのか優しく笑う。
「そうか。楽しんでおいでね。」
「はい。」
はやくバイトを終わらせないとな。と日高は思った。
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