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第8話

「ごめんね、待った?」 「いえ、俺も今きたところです。」 蟹江先輩から急遽飲みに行こう、と連絡があり日高は馴染みの居酒屋に向かった。ここはバイトのメンバーと飲みにくる際によく使う居酒屋であった。 「今日は2人ですか?」 「うーん、うーん?」 濁す蟹江先輩は向かいに座らず日高の隣に座った。その行動が日高には不思議で問うた質問であったが蟹江先輩からの明確な回答は得られなかった。 まあ、いいか。と思った日高は蟹江先輩と一緒にメニューを確認していく。すると人が来店する音楽が鳴り、目の前に人が立った感覚がして日高は目線を上げる。 「なんで。」 「ふふ。やっぱり知り合いなんだぁ。」 「おい、説明しろ蟹江。」 そう不機嫌そうに言ったのは櫂だった。日高の前に立っているのは朝会った筈の櫂であった。戸惑う2人をよそに蟹江先輩は楽しそうに笑う。 「綾瀬と日高君の話聞いて、同じ学校卒業してたし家も近そうだったし。あれれもしかして〜?とか直感的に思ったらやっぱりなあって感じ。ふふふ。」 「だったら直接聞けばいいだろ。」 「それじゃ面白くないでしょ。綾瀬、頭硬いよ。」 口論しながらも親そうな間柄の2人に日高は言葉を失う。その姿をみた蟹江先輩は説明を始めた。 「ごめん、言うの忘れてた。綾瀬は俺と同じ大学の親友。そしてお尻のほくろまで知っている仲。」 「ただの同級生だよ。お前とヤルくらいなら死ぬ」 「で、日高君は僕のバイト仲間で、愛しい恋人。」 「いえ、尊敬する先輩です。」 蟹江先輩の嘘だらけの紹介を聞きながら日高と櫂はお互いに視線を交わす。日高はなんだか気まずくなり、櫂から視線を逸らす。しかし櫂は日高に視線をむけ続ける。それは蟹江先輩が「綾瀬うちの日高君を睨むのやめてよね!」と言うまで続いた。

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