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頸 5
◇
あれからまた数ヶ月が経った。
あの日彼が死んだあと、僕は彼の身体を清めて天井から吊るした。それから用意しておいた石灰を全身に振りかけ、最後にシャワーを浴びせた。まるで花の種に水をやる気分だ。ここまでやる理由は、ただひとつ。早く彼の頸が欲しかったからだ。
だが人間の身体は思いのほか丈夫で、簡単には骨になってくれなかった。僕は彼が自然に白骨化するのを待つことにした。
彼を迎えるために仕事を辞め、新たな家に引っ越した僕は、その日が来るのを心待ちにしていた。
そんなときだ。僕たちの仲を引き裂く来訪者が現れたのは。
「深山彰 さんですね」
「はい」
「警視庁捜査一課の田島です」
「同じく藤本です」
警察が僕を訪ねてくる理由はない。さっさと話を終わらせたい僕は、彼らに尋ねた。
「僕に何か?」
こちらから聞くと、田島と名乗った男が一枚の写真を見せてきた。写真というより雑誌の切り抜きといったほうが正しいが。
「彼をご存じですよね」
「ええ。僕は彼の担当でしたから」
そこにはブランド物の服を着こなし、カメラに向かってポーズを取る、彼の姿が写っていた。
「深山彰さん」
田島が僕の目を見て言った。
「あなたに須藤巧真 さんの殺害、及び死体遺棄の容疑がかかっています。署までご同行ください」
了
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