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第三章【15】※

 刺激が欲しい。  腰をモジモジと揺らすように動かした。  遠野が何もしてくれないから。  自分の手を股間に持っていくが、やはり思うように力が入らない。    足りない。さっきのように触って欲しい。  察してくれと言わんばかりに、腰を突き出すしかなかった。    遠野の指が屹立の裏筋をそっと撫でた。 「やぁっ…ん、」  自分でもびっくりするくらい甘い声が漏れた。  それに気を良くしたのか、裏筋から亀頭にかけて指先で上下に撫で上げる。  優しく何度も撫でるから電撃のような痙攣が走る。 「あっ、は……んっ、んぅ……」  陰茎の裏筋を刺激しながら、もう片方の手は吐き出された精液をお腹に塗るように撫でまわしてきた。そこから這うように下に降りてきたかと思えば、足の付け根を撫でて睾丸に触れてくる。  一気に快楽から恐怖へと変わった。急所を触られ、変な汗が出てくる。  あまりにも怖くて目隠しのネクタイを外そうと自分の顔に手を伸ばした。  だが、腕を掴まれて阻止される。息を詰めて全身を硬直させるしかなかった。  遠野は、5本すべての指先で触れるか触れないかの微妙なタッチで、睾丸を刺激してくる。指先でふんわりとくすぐるような触り方だ。  それを続けられるうちに妙な気分になる。こわばっていた身体の力は抜けていった。  遠野ならおかしなことはしない。そんな信頼があったのかもしれない。  少しずつ刺激は強くなっていったが、息遣いが荒くなるほど興奮していた。  手のひらの中に睾丸を包み込み、やわやわと揉んでくる。もう片方の手は陰茎の根元を擦りながら、手のひらをねっとりと上下に滑らせた。  さっきの比ではないくらいの快感が湧き溢れる。 「あん、んあ、やっ、はぁ!……」    矢神がのけぞった拍子に陰茎から手が離され、胸の尖った突起に触れてきた。アンダーシャツ越しに、ツンツンと指先で弄られる。 「そこ、やっ……」  もがくように足をばたつかせ身体をくねらせたが、ぐいっと押さえ込まれ、その粒を何度も刺激してくる。コリコリ転がされ、ビリビリとした痺れが腰に響き身体が震えた。  今度は睾丸に触れていた指が陰茎に移動してくる。手のひらを使って念入りに上下させた。  胸をいじることは止めず指先で執拗に刺激しながら、反対の手は熱い屹立したそれを扱く。同時に触れられると異様なほどの快感に襲われるのだ。 「やぁっ…ん、ぁあ、はあ…」  再び射精感が訪れた。遠野の触り方が上手いからなのか、さっきよりも随分と早い気がした。 「まっ、で、る……」  ビクビク身体を跳ねさせて、言葉にしたと同時に出していた。  はぁ、はぁ、と呼吸を荒げて、絶頂の気持ちよさと脱力で、ぐったりと後ろの遠野に体重をかけていた。  彼は優しく腕をさすってくれた。大丈夫と落ちつかせるように。  だが、下半身は落ちついていない。  張り詰めて硬く屹立していた。  どうして、こんなに――。  やっぱり足りないと感じている。  2回もイッたのに。  こんな状態になったことがないから、自分がどうなっていくのか怖い。    永遠に続くのか? 薬の効果が消えるまで?  恐怖を抱きながらも、身体の方は激しい刺激を求めている。  再び遠野が矢神の性器に触れ、やんわりと撫でた。 「ああ……っ、ん、もっ……」  ――もっと触って欲しい。  口からこぼれ落ちそうになった言葉をかろうじて抑えた。  こんなのどう考えてもおかしい。  本当に薬のせいだけなのか。  自分が信じられなかった。    でも、快楽に呑まれ溺れている自覚がある。  もっと、もっと、深いところまで落ちていきたい。

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