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第22話

「意外に呆気なく終わったな」  二人が家に帰って来たのは、日が暮れる前だった。何日かかかると思っていたと鷹使は呟いたが、緋嶺は聞こえないふりをしてリビングへと向かう。 (何か、今更だけど……気まずい)  出会いが特殊過ぎたからか、何もかも見られてしまってから鷹使の事が好きだと自覚したので、いたたまれない。どうして奴は平気なのだろう、とうらめしく思う。 「おい、どうして急に落ち着かなくなった?」  鷹使を避けるように動く緋嶺の様子に気付いて、鷹使はずい、と近付く。緋嶺はう、と息を詰まらせ視線を逸らすと、鷹使はなるほどな、と更に顔を近付けた。 「今更意識してるのか」 「ち、ちげーし」 「じゃあ何だ?」 「……」  緋嶺は鷹使に見つめられて、顔が熱くなるのを自覚した。その反応に一番戸惑っているのが緋嶺で、思えば誰かを好きになること自体が初めてだったと気付く。 (……ってか、ホント人間離れした綺麗な顔してんだよな。人間じゃないから当たり前なんだけど) 「お前の初恋が俺で良かったよ」 「自惚れんな……」  鷹使は笑う。そうじゃなければ、今頃緋嶺は好きになった人のそばを離れたがらないだろう、と言われ、とことん読まれているな、と思った。 「……あんた、俺の伯父さんだろ? いいのかよ、こんな……」 「それも、今更だ」  鷹使の唇が、更にいい募ろうとした緋嶺の唇を塞ぐ。とろりとした甘い蜜が緋嶺の唾液と混ざり、足の力が抜けそうになって耐えた。 「……甘い」 「……じゃあ、もっとするか?」  唇が離れた隙に軽く文句を言うと、鷹使は声色も甘くまた口付けをする。  すると、スマホのバイブレーションの音がした。緋嶺は少しホッとすると、鷹使は舌打ちをする。 「……はい。お世話になっております……はい」  電話に出た鷹使はリビングから出ていく。緋嶺はその場に座り込むと、長く息を吐いた。  顔が熱い。身体が疼く。  自分はこんなにも快楽に弱かったのか、とショックを受けた。ある程度鷹使がコントロールしていると思うけれど、それにしても流されすぎではないかと思う程だ。 (護ってくれてるのは分かる。でもこのままだと……)  緋嶺を探す人ならざる者が、いつまでも返り討ちにできるとは限らない。ジリ貧決定の未来に、どうしたものかとまたため息をついた。 (俺は鷹使との【(ちぎり)】で安定してる。なら指輪をどうにかすればいいのか?)  またどうして緋月は緋嶺の体内に指輪を隠したのか? 緋嶺にしか扱えないというなら、さっさと破壊してくれたら良かったのに。 「緋嶺」  不意に呼ばれてハッとすると、いつの間にか鷹使が戻って来ていたらしい。しかし彼の表情は晴れず、重苦しい雰囲気を(まと)っていた。 「また出るぞ。今度は……死亡事件だ」

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