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第34話
「鷹使……」
緋嶺は引き寄せられるまま、彼の薄い唇にキスをした。何度か吸い上げ、角度を変えてはまた吸い付くと、唇にチリリとした感触がする。
「緋嶺、俺はまだ動けそうにないから、お前がやってくれ」
綺麗な髪を撫でているとそんな事を言われ、緋嶺は素直に頷いた。鷹使に口付けしながら彼の服を脱がせ、自らも脱ぐ。二人とも下着一枚になったところで、緋嶺は鷹使の身体を跨ぐように座り、口付けをしながらその滑らかな肌を撫でた。鷹使から微かな甘い吐息が出てきて、緋嶺はそれだけで下半身にズクン、と響く。
緋嶺は唇にしていたキスを、首、鎖骨、胸へと移していった。本当に滑らかな肌だな、と上下する胸の、桜色の部分に舌を這わせると、鷹使は僅かに息を詰める。しばらくその周辺を舐めたり吸ったりしていると、柔らかかったそこはぷっくりとして硬く尖ってきた。
「……気持ちいい?」
「ああ……」
小さな返事に緋嶺は、感じてくれてるんだ、と気分が良くなり、反対側も舌で愛撫しながら、下着で覆われた部分を撫でる。そこは僅かに硬さを保っていて、その様子に自分の熱も上がった。更にそこを形を確かめるように撫でると、少しずつ硬さを増していくのが嬉しくて、思わず笑う。
「どうした?」
「……いや」
緋嶺は答えず誤魔化して、鷹使の下着を脱がせた。ついでに自分のも脱ぐと、再び鷹使を跨いで座る。
「アンタを上から見下ろすの、気分良いな」
冗談っぽくそう言うと、鷹使はふっと笑った。それがバカにされたようだと思って、何だよ、と彼を睨む。
「お察しの通りだ。お前は俺の中では、ずっと乳飲み子のままだからな」
「なーにー? アンタ、今動けない事を忘れてないか?」
予想通りバカにされて、緋嶺は腹いせに、鷹使のまだ勃ちきっていないそれを握ると、軽く扱いた。するとそこはみるみるうちに硬くなり、アンタもここは正直だよな、とからかう。
「どれだけ言われても、それがお前なら腹は立たないな」
鷹使はそう言って、緋嶺の腕を掴んで引き寄せ、口付けをした。少し甘い味がしたそれに、緋嶺は狼狽えると、彼は笑う。
「なぜなら、何を言ってもお前は可愛いからだ」
「……っ」
そう言われて緋嶺は不覚にも息を詰める。少しずつ動けるようになっていたらしい鷹使は、緋嶺の尻を掴んで、それを自身の怒張に誘う。
「え、ちょっと待て……っ、もうちょっと俺を楽しませろよっ」
「お前の焦れったい愛撫など、黙ってされるままだと眠ってしまいそうだからな」
鷹使は遠慮なく、力ずくで緋嶺の後ろに楔を埋め込んでいく。慣らさないまま咥えこまされ、緋嶺は思わず声を上げた。
「や……っ、きっつい、……鷹使……っ」
それでも奥のいい場所に鷹使の先が当たり、緋嶺の太ももが震え出す。すると何かが吸い付くように、ピタリとくっつく感触がした。けれどそれが何か考える余裕はなく、みっちり埋められた穴のせいで緋嶺は上手く呼吸ができない。
「感じたか? 繋がった……」
「あ、ぅ……、ンンン──ッ!!」
鷹使の熱と吐息で、緋嶺は全身を震わせる。動いてもいないのに与えられる快感は、緋嶺の意識を何度も飛ばし、その様子を見た鷹使は口の端を上げる。
「……気持ちよさそうだな?」
「ああッ、い、嫌だ……ッ! 鷹使ッ、助けて!」
止まらない絶頂に、緋嶺はなぜか鷹使に助けを求めた。鷹使は緋嶺の両手を指を絡めてキツく握り、緋嶺の奥を軽く一突きする。緋嶺はその刺激でこれ以上無いくらいガクガクと身体を震わせ射精し、パタリと鷹使の上に倒れ込んだ。
「──ッ!!」
はあはあと鷹使の胸の上でぐったりしていると、急に性感を高めた彼を恨めしく思う。しかし怒る気力はもはや無く、自分の息を整えるのに精一杯だ。
「おま……ちょっとは手加減しろよ……」
切れ切れの息でそう言うと、鷹使はクスクスと笑った。その振動がまた後ろを刺激するので、笑うな、と顔を上げて鷹使を睨む。
「悪い。ついお前が可愛くてな」
イカせたくて調子に乗ってしまうんだ、と悪びれもなく言う鷹使。もう、と身体を起こすと、軽く腰を揺すられ、緋嶺は顔を顰める。
「もう繋がったから良いんだが……緋嶺、付き合ってくれるか?」
「そう言って、もう、腰動かしてんじゃん!」
あっ、あっ、と突かれる度に声が出てしまい、緋嶺は唇を噛んでそれに耐える。それに気付いた鷹使は、打ち付ける腰を強くし、緋嶺の胸の先を摘む。
「んっ、ああっ、……止めろ……っ」
緋嶺は一際高い声を上げて、鷹使を太ももで締め付けてしまった。そうすると覚えのある感覚が迫ってきて、思わず待って、待ってと鷹使の胸をいじる手を掴む。
「……止まって良いのか緋嶺?」
これが良くてイキそうなんだろ、と一向に止めない鷹使の声が掠れた。緋嶺はそれにも敏感に反応してしまい、訳が分からないまま、また視界が一瞬ブラックアウトする。
「……ッ、あッ──鷹使っ!」
緋嶺は思わず鷹使のお腹に手を付いて、苦しい程の快感に耐えると、鷹使は緋嶺の手を引いて、彼の身体の上に寝かせる。呼吸をするので精一杯な緋嶺は、再び動き出した鷹使の脇から腕を回し、力一杯しがみつくしかなかった。
緋嶺はもう泣きそうな声で喘ぐしかなく、けれども五感はどんどん冴えて、些細な刺激も拾って快感に変換してしまう。鷹使の荒い息遣い、肉がぶつかる音、シャンプーの匂い、熱く湿っていく肌──。
「緋嶺……っ」
鷹使が緋嶺を抱きしめた。緋嶺は思わず彼の肩に噛みつき、もう何度目か分からない絶頂を迎える。
「──ッ!!」
二人同時に息を詰めると、緋嶺の口の中にじわりと鉄の味が広がった。思わずそこを舐めて啜ると、鷹使の手が緋嶺の頭を撫でる。
「……アンタの血が一番美味しい……」
まだ息が整わないままそう言うと、鷹使は軽く笑った。その声はどことなく嬉しそうだ。
「……そうか」
二人は気が済むまで、そのまま抱き合った。
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