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番外編「七夕翌朝」2/2

 よしよし、と頭を撫でられた所で、友達の|淳《じゅん》が到着。 「おっはよ。何撫でられてんの?」 「あ、おはよ。いや、べつに……」  面白そうに笑ってるから、何の意味も考えてなさそう。  こっちは内心ドキドキなのだけど、淳は当然全く関係なく、続ける。 「なあ英語の宿題やった? 長文読解問題、まったくわかんねーんだけど!」 「……長文読解……? ああっやってないー!」  昨日色々浮かれすぎて、宿題なんてかけらも開いてないー! 「えっマジ? お前ヤバいな、オレのでよければ写させてやるけど……」 「えっ。まったくわかんねーって言ってる奴の写したくない……」 「なにをー!」  「わー、ごめんってー」  淳に肩を組まれて、ゆさゆさ揺すられていると。  不意に腕が引かれて、魁星の方にするりと引き寄せられた。  ――――……んん?  ……くっついてたから、引き離された……?? 「見せてやるから、ガッコ行くぞ」  魁星の言葉に、「マジで? 神、魁星!!急ぐぞー 英語一時間めだー」と、淳が言うので、急ぎ足で歩き始めようとした瞬間。  くい、と手を引かれて振り返る。 「……朔、前から言おうと思ってたんだけど」 「うん?」 「……抱き付かれたりしすぎ。抵抗して?」 「――――……」  目が点。 「え。何……それ」  早く来いーと騒いでる淳に、分かったーと返しながら。  魁星を振り返る。  それって――――……やきもち……とかですか??  思った瞬間。  また顔に熱が集まる。 「――――……」  魁星が困ったみたいに、口を閉ざして、オレの手を離した。 「……オレずっとお前のこと好きだったけど……」 「――――……?」  柄にもなく、めちゃくちゃ照れてるっぽい顔をして。  少し、視線を逸らされる。 「……昨日から、それの何倍も、好きになってる気がする。なんでそんな可愛い顔ばっかすんの」 「――――……っ」  もうオレ、どこまで顔、熱くなれるんだろう。 「何してんだよ、早くー!」 「あ。……分かったー」  とりあえず走り出すと、淳が魁星に向けて、「お前も来なかったら見せてもらえないだろー早くこーい」と叫んでる。ちょっとだけ振り返て魁星を見ると。まだちょっと照れてるっぽい魁星は、息をついて歩き出した。  うう。  ――――……ダメだ。照れすぎちゃって。  魁星がこんな風に照れるなんて、思わなかったよう……。  だめだ、もうオレ、当分、使い物にならない気がする。  もーすぐ夏休みだから、いっか……。うん。  いいってことにしよ。  近づいてきた魁星が、さりげなく、オレの頭にポンポンと手を置いて、オレをちょっと追い越して、少し前にいる淳に並んだ。 「~~~~……っ」  ……好きすぎて、もーだめ。  触れられた後頭部を、自分の手で触れてしまう。  彦星と織姫も。  ……昨日は、イチャイチャしてたのかなあ……。  なんて、いろいろ溶け切ったこと考えてたら、また淳に呼ばれて。  淳と一緒に振り返って待ってる魁星の所に向けて、歩き出した。  昨日の今日ですでにキャパオーバー。  どうなるんだろ。これから。  ――――……ドキドキ。だけど、楽しみ、でもある。   ……だけど魁星のファンにだけは、絶対絶対バレないようにしよっと。 (2022/7/15) 番外編「七夕翌朝」Fin

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