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番外編「おとまり」1

 七夕が木曜日だった。  翌日金曜は、もう朝から恥ずかしくて、もう、意識しすぎて、サッカー部もあったけど、凡ミスばっかりで先輩に叱られまくり、しまいには「朔、お前大丈夫?」と真剣に心配されてしまった。オレはそんななのに、魁星は全然へっちゃらなんだから、もー、ほんとにずるい。  いつものように、部活を見学してる女の子達も何人も居て、相変わらず、魁星はカッコいい。    土曜も午前中は部活だった。  一緒に帰る途中、魁星が言った。 「うち、泊りに来る?」 「…………えっ???」  びっくりしすぎて、魁星を見つめて固まっていると。 「オレのものになった朔くん、呼んどいでよって母さんが言うんだよね……」 「――――……」  ぷしゅーーー。  もう。  顔から、湯気が出そう。実際に出てるんじゃないだろうか。  魁星のものになった朔くん、とか。  ……普通に言わないでください。 「……朔、真っ赤」  クッと笑って、オレを見る。 「……お前、よく今までオレの前で普通の顔して過ごしてたな?」 「……だって、魁星が……オレのこと、好き……なんて思わなかったし……」  最後の方は、消え入るみたいな小さな声で言うと、魁星の手が、オレの頭を撫でる。 「ずっとそんな顔してくれてたら、すぐ分かったのにな」 「……無理だよ、だって、バレないように必死だったし……」 「まあいいや。その話また後でしよ――――……で。来る? 泊まり」 「……魁星のおばちゃん、ほんとに許してくれてるの?」 「捨てらんないようにって言ってる位だけど」 「……じゃあ、おばちゃんに挨拶に行く」 「ん、おっけー。 じゃあ、シャワー浴びて、昼食べたら、連絡して」 「うん」 「明日、休みだから、そのままデートしような?」 「――――……っっ。……う、ん!」  狼狽えまくりで返事をしたオレに、魁星がクスクス笑う。 「じゃあな、朔。あとで。――――……早く、来いよ? 昼間は誰もいねーからさ」 「――――……っ」  オレをまたしても、最大級に、真っ赤にさせて。  魁星は、笑ってオレを撫でてから、離れて行った。  もう。魁星ってば………。  魁星ってば……。  好きすぎるー……うわーん。  オレはもう、赤いの誰にもバレないように、猛ダッシュで、家に帰った。   (2022/7/22) 少し続きます。

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