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第11話
「チクショー! 一護 っ! どこにいったんどっ!」
あれから寧人 は一護とのワンナイトラブにショックを受けてますます塞ぎ込んでしまった。
裏のルートを使用して一護のフードジャンゴでの登録情報を見ようとしたが削除されていたのだ。
一護のフルネームを思い出して美容院を検索したがホームページのオーナー名も変わっていた。
それ以来、寧人は麻婆丼を食べられなくなった。麻婆丼の写真で見るだけで一護のことを思い出してしまうのだ。
何度か彼とのことを思い出しながらオナニーしたが虚しさばかりが残り、辛くなる。
自分はやはりもう人と関わることも、恋をすることもできない……と落ち込んでいた最中に営業の古田から得意先に同行してほしいと連絡が来たのだ。
何故自分が選ばれたのだろうか、営業なんて行ったことのない寧人は戸惑うばかりである。そして古田は自分にとって苦手な人間で何故彼と同行するのかわからないのである。
スーツはテロテロのものでサイズも合わないがとりあえずそれを着て久しぶりの出社。久しぶりすぎて電車で乗り継ぎを間違えて構内でも迷子になり時間を過ぎての出社。
ようやく着いた会社では寧人のことを悪くいう古田と上司の会話を聞くが聞かなかったフリ。
とりあえず自分はついていくだけでいい、でもなぜ自分が呼ばれたのか。SEなんて他にもいくらだっているのにと思いながらも寧人は得意先へ行く。ぶつくさと。
古田に身の回りのものを整えられて無言のまま営業車に乗せられて向かった先。
そこは……。
フードジャンゴ日本支部であった。
たしかにここの注文や人事管理それぞれのアプリ作成を寧人も担当したことがあった。
「……まぁ僕がほとんど話すから鳩森くんは横でメモなりなんなりしてくれ」
「は、はい……」
「おい、そんなうかない顔すんなよ」
「すいません……」
「どうやら社長が交代したらしくて。つい最近なんたけど若い社長らしい。舐められないように」
「は、はい……」
と社長室のある階までエレベーターは登る。寧人はドキドキしすぎて吐きそうになるが抑えた。古田にはギロッと睨まれる。
最上階に到着。
そこに誰か待っていた。長い髪の毛を一つに結び、すらっとしたスタイル。寧人は見たことがあったのだ。
「はじめまして。私、社長の菱一護です……」
「初めましてですー、よろしくお願いします、社長……っておい、鳩森!」
寧人は固まってしまった。
「鳩森さん、ご無沙汰してます」
「一護……」
寧人の目の前にはスーツ姿で髪を綺麗に一つに結った一護が立っていたのだ。
「……もう舐められてた……」
「ん? どした、鳩森」
「何でもないです……」
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