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第12話

 寧人(よしと)は一旦、思考停止した。だがまた元に戻り、なぜここにあの一護(いちご)がいるのか、麻婆丼を運んでいた男が、美容師と言って寧人の髪の毛を切っていた男が社長なのか、自分のモノを舐めてなぶって放出させまくった男が……目の前にいるのかと。 「鳩森(はともり)くん、社長とは……」  寧人はしどろもどろになる。この目の前の男に何度も何度もねぶられしゃぶられ遊ばれて。寧人はものすごく下半身が疼くのか、もぞもぞしている。 「ちょっとしたお知り合いですよね、鳩森さん」  一護はニコッと笑った。ちょっとした……と寧人はその言葉に引っ掛かったが。 「んー、そいや彼からたくさん要望があるような?」  と何かメモをいくつか一護は見ている。寧人はまさかと思い一護からそのメモを取り上げて目を通す。  そのメモには寧人がパソコンに書き溜めておいたフードジャンゴのアプリに対する改善要求や不満などであった。  書いたものの、上司に相談せずに終えたものや、改善要求したものの返答が曖昧だったものもある。寧人は一護を見てあの時パソコンを見ていたのはこれらを入れたファイルを一護のパソコンに送っていたからなのかと。  古田はメモを取り上げて読む。 「古田さん、こんなにも改善案があるのになぜ伝えなかったのですか。社内の人間が不満に思ってることはきっと利用者の、お客様の中にも同じく不満に思っているかもしれない。と思いまして……実際エゴサーチしましたら似たような不満の声もあった。もっと社内で意見を通しやすくできるようにしないと」  一護はエゴサーチした一般利用者の不満の声をまとめたパワーポイントをタブレットで表示した。  古田はそれを見たあと目が泳いでいる。どうやら彼もエゴサーチをしていてそれらを知っていても上に通さなかったようだ。色々とめんどくさそうだと。 「も、申し訳ございませんでしたっ……そ、その……」 「三日後また改めてこれらの不満に対する改善策を練って御社に来てください。近々アプリのリニューアルも検討していましたが他の会社に切り替えも検討しておりますので」 「そ、それは困りますっ!」  古田はあたふたして取り乱す。 「切り替えは冗談にしろ……あと鳩森さん、君もまた三日後一緒に来てください」  寧人はしどろもどろになる。そして完全に混乱してしまったのか社長室から出て走り去ってしまった。叫びながら。 「ああああああああああっ!」 「鳩森っ!」 「もう限界でぇえええええすっ!」 「なにがだーっ!」

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