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第21話
「お兄ちゃんったら、別にあのままやっててよかったのに。すっごくセクシーだった」
「それはそれはありがとうございますー。寧人 は人に見られてやるのは慣れてないから完全に停止しちゃったじゃない。せっかく楽しんでたのに」
「寧人さんもごめんなさいね、邪魔しちゃってー」
食卓で三人麻婆丼を食べる。頼知 は帰るつもりではなくて、一護 が頼知を寧人に紹介したいがためによんだのである。
寧人は恥ずかしさでいっぱいなのと不完全燃焼でうつむいて麻婆豆腐を食べる。ガツガツと。
「いい食べっぷり。凄い性欲ありそう!」
その頼知の言葉に寧人は口の中の麻婆丼を吹き出し、寧人が拭く。
「ちょっと、頼知! 変なこと言わないの。食事中だよ。でもさすが頼知の頭皮マッサージ……性感帯をうまく突くから女性のお客様はあそこびしょ濡れだよね」
寧人はまた麻婆丼を吹き出した。気管支にも入ったようで一護に背中をさすられている。水もゆっくり飲ませる。
「お兄ちゃんこそ食事中にそういう話はしないの……」
「そうだね、ごめんなさい……寧人」
寧人は首を横に振り、大丈夫大丈夫とポーズをした。
「本当に気持ちよかったよ……変なところ見せちゃったけど気持ち良くって、あのままだとやばかったです」
「あら、寧人さん。いつでもわたしやりますよ。その時は是非是非抜いちゃってくださいっ……いてっ!」
頼知は一護に叩かれた。漫才師みたいに。とても痛そうである。
「僕の寧人なんだから」
一護のその言葉に寧人はドキッとする。結局一護は自分にとっての何なのか。
ただの居候? エッチの相手? そして恋人なのかと。一護はもう完全に寧人の恋人気分。
さっきからも口を拭いたり、身の回りのお世話をしている。
その姿を見て頼知は笑う。
「お兄ちゃんったら、お世話焼きさんは健在ね。でもやりすぎると今までの彼氏みたいに何もやらなさすぎてダメ人間にしたり、尽くしすぎて嫌がって逃げちゃうよ」
「大丈夫、寧人はもともとダメ人間だし。嫌がらないし。てか過去の男の話はやめて」
ダメ人間と言われた寧人はしょんぼり。40歳の男が20代の男の子にお世話してもらっているのもかなりアレである。
それに一護の過去の彼氏話も凹むポイントである。その感情こそ
「寧人さん、一護お兄ちゃんは長男だからすごくしっかりしててね。僕たち弟、妹たちの面倒をよく見ててくれて」
「昔からそんな感じだったんだね。兄弟は何人? 2人はそこまで似てないけど……」
と何気なく言った途端に部屋の中は一気に静まった。寧人は、ん? という顔をして菱兄弟を見る。
その空気を和ませたのは頼知。
「寧人さん知らなかったんだぁ。ねぇ……」
「お前の存在も今日知らせたばっかりだ、しょうがない……」
「私たちね、異母兄弟なの」
と言われた瞬間に寧人は頭を下げて謝った。
「ごめん……それとは知らず。でも2人ともかっこいいし」
「まぁそれぞれの母さんが美人だったし、頼知の母親はイギリス人と日本人のハーフ。つまりクオーターだ」
一護も頼知もくっきり二重で、一護はロン毛が似合う長身、頼知は背は低めだがエキゾチックな顔立ちは女性にも男性も虜にする。
だが寧人のタイプは一護のようだ。
「他にも何人かいたよな、弟と妹」
「そうそう、一時期六人くらいいたけどさ、一護兄ちゃんが下の子たちの面倒をずっと見てて、全員父親違うけど忙しい母さんの代わりに料理とか作ったり家事もしてて」
寧人はホォ、と何かを悟った。一護のお世話好きはこの時の経験があったからである。にしても「一時期六人くらい」というのも気になる。そしてこの2人は異母兄弟なのに下の兄弟たちは父親が違う、ただならぬ複雑な家庭事情である。
それは聞いてはならぬと、卵スープをかきこんでご飯を済ませた。
なぜなら一護があまりいい表情をしていないというのを途中から寧人は気づいたからだ。
頼知はその後本当に帰っていき、夜は普通にまったり過ごし、布団の中で寧人は一護を抱きしめた。
不器用ながらも大した言葉をかけられなかったせめて彼ができること、であった。
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