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第55話
そしてスタッフである寧人 の家から本格的スタートになった。
昔からサイクリングが趣味だった一護 のペースに合わせるのは大変であった寧人は、放出できなかった精力で追いついた。
もちろん撮影もしなくてはいけないし、行く前に地元の地図で確認したルートで一護を、誘導しなくてはいけないし、大変なのである。
「寧人ーっ! 気持ちいいだろっ」
「うん! 気持ちいいいっ」
「ようやく一緒にサイクリングできたーっ」
一護は実に嬉しそうである。寧人ももちろん嬉しい。
そして2人は目的の店についたのであった。
地元の中華料理屋さん。寧人もここに来てから数回来ていた。麻婆丼が出てきた。ついさっき食べたような感覚である。味は昔食べたものとは全く違ったものでガッカリしたものの、独特の匂いと味と店長が気さくな人で2回目も行きたいと思えたお店だという。
「やっぱ僕と寧人と言ったら麻婆丼だけどフードジャンゴと提携していた粒々軒は日本のラーメン屋さんがまかないで作ったやつらしいからね。味も日本人向けなんだよ、あれは」
「本格的な中国の麻婆はちょっと辛いというか肉も違うし……」
「グルメレポ下手だね。それに食べ方も汚い」
「僕はあくまでもスタッフなんだから」
「まぁ、そうだけどねー」
2人は唇を真っ赤にして麻婆丼を食べる。
「にしてもさ、なんで一護はここにゆかりもないのにこの企画に乗ったわけ?」
一護は紙ナプキンで口を拭き、それを綺麗に畳む。
「ん? そりや寧人に会いたいからに決まってるでしょ」
「……えっ。で、でもさ普通に会いにこいよ。会いに来れただろ?」
少し寧人は照れてるのか麻婆丼が辛かったからなのか顔を真っ赤にしている。
「そうだけどー、この方がロマンティックじゃない? それにたまたまこの放送局が周年祭のために企画で自転車旅したい人募集って載ってたから、これは応募しないとーって思ったのね。僕も一応ネームバリューあるし?」
「自賛好きだな」
「んー? そうだね、自分好きじゃないとー。それにこれからまた新しい事業したいからもっと顔を広げて人脈も広げて……」
一護は美容専門学校生だった頃に知り合いの病院経営を任せられ、当時バイト先だったマッサージ店(テレビ用にはメンズマッサージ店というのは伏せてあるが大体はバレている)のナンバーワンだった一護はそのマッサージ店も同時に経営。
そしてその後は急遽フードジャンゴ社長だった父親の死で、美容院などを弟の頼知に任せてフードジャンゴの社長となる。
色々あった末にフードジャンゴの社長の座を2人目の経済学部生である優秀な弟(異父兄弟)に任せたという。
そんなことしておきながらまた事業を始めるために準備をしてる頃にこの企画を知ったのだ。
「仕事にもなるし、寧人とのサイクリングも
楽しめるし一石二鳥、いや三鳥?」
とニコーっと一護は笑う。
「はぁ、僕には分からない世界だな……」
と言いつつもまだ下半身がうずく寧人。それに気づいた一護はカメラの見えないところでまたタッチして寧人は悶える。
「まだ今日は走るんだからね、がんばろっ」
と一護に言われると寧人はうなずいた。
だが寧人は気づいた。
「今夜はどこに泊まるんだ……」
「ちょ、寧人。それはスタッフの君が手配しないと!」
「えっ、それもやるの?」
「僕たち野宿するつもり? やめてよー」
慌てて寧人はスマホを使って調べるが土日前ともあって安い宿がない。
「どうしよ、一護。予算は抑えろって所長に言われたのに……」
とオロオロしだす寧人。水を飲んで落ち着かせる。だが一護は冷静に
「安いところならいくらでもあるわよ。ラブホとか」
ブーっ! 寧人は水を吐き出した。
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