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 広内は、ことさら大人しいというわけでもないのに影が薄かった。  そういえば、と部室内を見回すと、同じ一年生どうしでふざけあっていたり、二年や三年の映画談義の輪の片隅にいたりする。  あいつはいる、こいつはいる、あれ広内は?  と思って見回すと、いないかと思えばどこかにいる。  それは飲み会の席でもそうだった。目立たずひっそりと、でも見つけるといつもにぎやかにわいわいとやっている。少なくともそう見える。  あれは特技だろうか、と竹島は思ったことがある。  気配を消せる特技。  そんなものがあれば便利なときもあるだろう。人から見つけられずに行動してみたいものだ、と竹島は、広内を羨ましく思ったりさえした。  だからというわけでもないのだろうが、視界のどこかに広内を探す機会が増えた。  いないように感じるのだがいるだろうか、と見回すと、いる。  いるのを確認するだけで、別にわざわざ広内がどうしているかをちゃんと見たりはしない。  けれどもときどき何気なしに目を向けたときに、目が合うことがある。そのたび広内は、申し訳なさそうに小さく頭を下げて視線をそらす。  竹島は、もとから注目を浴びやすい性分なのを自覚している。人から見られることには慣れているし、だから何気なしに目を向けたときにそこにいる人と目が合うこともよくあった。  ただ、広内の場合は少し、違っていた。  何が違うかはわからなかった。  そこはかとない違和感が薄ぼんやりとあるだけだった。  だから、その感覚は一瞬ののちにすぐ消えた。  消えてそのたび、忘れた。

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