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4:SIDE 竹島
こんなものなのか、と竹島は思う。
男どうしだからなのか、広内だからなのか。
どうやら広内はやはりゲイで、竹島のことが好きであるようだ。それはわかった。
俺のことが好きだろう、という問いかけに、否定をしなかった。それに、途中から抵抗しなくなった。だから間違いはないのだろう。
そして、もう一つ確認できたことは、竹島が男相手でもいけた、ということだ。
思っていたよりずっと、すんなりと抱けた。前もって学習していたのが良かったのかもしれない。
ただ、映画視聴や池田の講習ではわかっていなかったことが、あった。
女とは違う筋肉のつき方に基づいた弾力のある肌の、吸いつくような滑らかさ。
苦しそうに抑えた呼吸と声の、艶 めかしい気配。
女とは違う性感帯への愛撫の、違う反応。
――挿れたときの、圧迫感。
酔っていたせいもあったのかもしれないが、衝動が止まらなかった。
あんなふうに行為に夢中になったのは、初めてだったかもしれない。
ちょっと、くせになりそうだ、と思う。
とにかく、良かった。
――ただ、よくわからない。
竹島は今まで女としかつき合ったことがないので、女というものは一様に、竹島を所有物として扱いたがったし、ひとたび関係を持ってしまえばそれをたてにつきまとってくるものだった。だから多少面倒ではあっても、それはそれでそういうものだと思って気にしていなかったのだったが、広内の場合は違った。
広内は、いたって普段どおりだった。
何も変わらなかった。竹島を独占しようともしなかったし、つきまとってもこなかった。
こなさすぎた。
もちろん、映画撮影に忙殺されて、落ち着いて話すヒマさえなかったのもある。でも広内があまりに普段どおりなので、それを望んでないような気さえした。
確かに、広内はゲイであることを隠しているようだし、周りにバレても困るだろうから、あえて竹島には近寄らないようにしているのかもしれない。
よくわからない。
男どうしとはこういうものなのか、広内個人の特性なのか。
実際、そんな広内に対してどうふるまっていいかわからず、結局竹島も、普段どおりに過ごしていたのだった。
ただ、翌週の部会終わりの恒例の飲み会で、隅のほうで飲んでいる広内の姿を目にすると、そのまままっすぐ帰るわけに行かなくなった。
三次会へ向かう途中、広内を連れ出した。
「寄ってくか?」
そう誘うと、広内はついてきた。
アパートへ戻るなり後ろから抱きしめても、嫌がる素振りは見せなかった。
我慢できずに、押し倒した。
いったいどうしたんだろう、と思う。
これまで竹島は幾人かの女とつきあってきたけれど、そんなふうに求めたことがはたしてあっただろうか。
その後も、飲み会のたび、竹島は広内を持ち帰った。
けれどもあいかわらず、昼間に会うときは普段通り、映研の部長と新入生という立ち位置を崩さない。
抱き合った翌朝も、広内は竹島が寝ている間に帰ってしまう。
最初の朝はまあ、しかたがないかと思った。突然のことだったし、朝、布団の中で顔を合わせるもの気まずかったんだろう。
でも、毎回だ。
竹島が目を覚ますともう、広内はいなくなっている。
広内は、ベタベタするのが苦手なタイプなのだろうか。
それとも男どうしというものは、そういうものなのか。
朝、気怠い体を起こして空っぽになった隣を見ると竹島は、なにやら物寂しい気が、した。
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