3 / 17

第1話

(生徒会か…それに霧宮蓮さん、かっこよかったな) 式後各々は自分のクラスへ戻り、今は担任が来るのを待っている時間だ。 頬杖を付き、むさ苦しくて騒がしい教室から目を逸らし、窓の外へと目をやりながら物思いに(ふけ)る。 何となく暇つぶしに鞄からスマートフォンを取り出すと、画面にLimeの通知が表示されていた。 相手は母さんの弟にあたる人。 内容は、"少し君の事について話がある。暇になったら電話してきて欲しい"とのことだ。 どうせ母さんのことだろうと、小さく溜息を吐いてから"了解です"と返した。 それから電源を切り、鞄に戻したタイミングで皆が慌てて自分の席へと戻って行く。 担任が来たのだ。 「お、皆ちゃんと座ってて偉いな」 ガラガラと扉を開けて入って来た担任は、見るからに若そうな、そしてどこか頼りなさげな雰囲気だった。 そして皆途端に先生を見るなりガヤガヤと騒ぎ出した。 「はい静かに。今日からお前らの担任になる、水野(みずの) 涼介(りょうすけ)だ」 言いながら水野先生は黒板に字を書き始める。 現代文担当らしく、字も綺麗だった。 それにしても何か涼しい名前。 「なぁ、涼ちゃんって彼女いんの〜?」 「俺も気になる〜」 男子高生らしい質問に皆が笑っている。でも僕の口角は下がったままだ。 「残念だけどいません。はい、それはさておき皆直ぐ帰りたいだろうし手短に明日の事話すぞ」 先生の答えにあちこちから声が上がるが、全部スルーで話を進めて行く。 「明日はミーティングやら対面式やらがあるから服装ちゃんと整えること。以上。これから1年間よろしくな」 「ウケる、ほんとに手短」 1人が突っ込んで笑いが巻き起こる。さっき真っ先に先生に質問した奴だ。 その後解散となり、教壇に立つ水野先生を皆が取り囲んで質問責めにする中、僕は足早に教室を出た。

ともだちにシェアしよう!