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第4話
「…み……臣!」
覚醒まで浮上しかけた意識。身体にかかる揺さぶりと、耳を通り抜けて行く優しい低音が名前を呼ぶ。
「んん…な、に…はっ!」
小さく呻きながら瞼をゆっくりと開き、そして僕はまるで漫画のワンシーンさながらに飛び起きる。
しかし勢いを抑制し、腹部を締め付けるシートベルトに思わず情けない声が出てしまった。
「ふ、よく寝ていたね。着いたよ」
「え、もう?…って、何ここ」
普段は物静かで落ち着いた子と印象を持っている叔父さんは、隣で少し驚いた様な表情をしているけど僕は気付かない。
何故なら窓の外に広がる景色に釘付けだったから。
だって。
「大きなお屋敷…」
そう目の前の建物は、まるで中世の貴族が住んでいるような立派なお屋敷だった。
「さぁ行こうか。中に入ったらもっと驚くと思うよ」
先に降りた叔父さんにドアを開けてもらってから僕も続いて降車し、少し歩いて門を抜けると中庭にたどり着いた。
「中庭も見事なものだろ?」
「うん…凄い…」
僕はそこで立ち止まり、一面に春の暖かな陽光を惜しげも無く浴び、凛と咲き誇る春の花々を見渡し、続いて屋敷を仰ぎ見る。
異国情緒を感じる建築様式は、おとぎ話の世界に迷い込んだのかと錯覚させるのに十分だった。
「叔父さんこれ、どうしたの?」
こんな立派なお屋敷、維持するのだって莫大な費用がかかるはず。
「実はね、不動産関係の仕事をしていた時に友人から譲り受けたんだよ。維持費とか、大きな費用だけは負担するから是非貰ってくれって言ってね」
「へぇ…叔父さんって凄いんだ」
「まぁね。さぁ、行こう」
意外にも謙遜はせず、どこか自慢気な叔父さんに着いて石造りの階段を上り、豪奢で重々しい扉の前へ。
ギギ、と両開きの扉は叔父さんの手により開け放たれて行く。
「うわ…」
僕は再び内観にも圧倒された。驚きの連続である。
エントランスは吹き抜けで、奥の方にリビングと思しき広い空間が見える。
赤いカーペットにアンティーク調の家財、上を見上げれば豪華なシャンデリアが眩しいくらいに輝いていた。
「ここで4人が暮らしてるけど、今は用事があるらしくてその内の1人に紹介するよ」
言いながら靴を脱いで白いふわふわしたスリッパに履き替える叔父さんに習い、僕も同じように履き替えた。
そしてそのまま真っ直ぐに、先ほどリビングと予想した場所へと歩いて行く。
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