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第7話

「臣君、これもリビングの方に運んでもらっていい?」 「はい、分かりました」 リビングからは少し離れた場所にある厨房。そこで僕は今、水瀬さんと共に夕食の準備をしていた。 そして出来上がった彩りも鮮やかな料理たち。見ているだけでお腹が空いてくる。 僕は先程から水瀬さんの手伝いをしながら、スペースが無くなり始めるたびにトレイで料理を運んでいた。 「水瀬さん、運び終わりました」 「ありがとう。じゃあ今作ってるので終わりにしようか」 「はい!そうですね」 「臣君、あーん」 不意に水瀬さんは菜箸で掴んだ一口サイズのじゃがいもを差し出して来て、僕は小さく口を開けて受け入れる。 「どう?」 「ん…美味しいです!」 じゃがいもを咀嚼(そしゃく)し、僕は素直な感想を伝える。 程よく染み込んだ出汁は優しい味付けがして、水瀬さんの人柄が表れていると言っても過言ではない。 …って、何言ってんだろ僕。 「よし、じゃあこれで完成。お手伝いありがとね、臣君」 「いえいえ、僕は何も。水瀬さんってお料理上手ですよね」 「料理が好きだからね、昔からよく手伝ったりしてたし」 「すごいですね、料理出来る人憧れます」 「僕で良ければ今度教えるよ」 「本当ですか?ぜひお願いします」 「ふふ、僕は厳しいよ?さぁ、じゃこれ運んじゃおっか」 「はい!」 僕達はエプロン姿のまま残りの料理を運び、その見た目も美しい料理たちはリビングの机を埋め尽くすほどの品数になった。 それからほどなくして、残りのメンバーも続々と帰宅してきたのだった。

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