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第8話

「じゃあまず、臣君の正面の人から順番に自己紹介して行こうか。時計回りにね」 「なら俺からだね〜。俺は入間 千里(いるま ちさと)、現役大学生だよ。よろしくね〜、おみみん」 「おみみん…?」 薄桃色の髪をした彼の口から出た言葉に思わず疑問符が浮かんだ。 「あー、気にしないで。千里君はよくあだ名をつける癖があるんだ。ちなみに僕はなんだっけ?」 そう答えてくれた水瀬さんは微笑みながら入間君に振る。 「かややん!可愛いでしょ〜?」 「う、うん」 「はい、臣君が困ってるからそこまでな。私は桝谷 海斗(ますや かいと)。職業は警察官だ。何か困ったことがあったらすぐに相談するんだよ?」 と、入間君の反応に困った僕に助け船を出すように自己紹介を始めた桝谷さん。 「はい、警察官だなんてかっこいいですね」 僕が目を輝かせて言った言葉に、桝谷さんは何故か困ったような笑みで"ありがとう"と返した。 「海斗さんはこの中で最年長で、皆のお父さん的立場なんだよ」 「いや、そんなことはないよ」 水瀬さんの台詞に少し照れくさそうにしている桝谷さんの隣。 先ほどから一言も発しておらず、ただ黙ってこちらを睨むように視線を送る人がいた。 「あー…それで海斗さんの隣に座ってるのは北里 愛生(きたざと あき)。千里君と同じ大学で、バンドマンとして活動してるんだ」 「そうなんですね、素敵です」 「………別に」 僕は純粋に褒めたつもりだったが、北里君はそっぽを向き、冷たくあしらわれてしまった。 「気にしないで、臣君。いつもこんな感じだから、愛生君は」 「…わかりました」 水瀬さんはそう言ってくれたけど、その内打ち解けられるのか少し不安になった。 「じゃあ、今度は臣君から改めて一言どうぞ」 若干沈んでしまった空気を打ち破るかのように、明るく話題を振った水瀬さんに促された僕は、簡単な自己紹介と挨拶を済ませる。 その後水瀬さんと協力して作った料理を皆で食べ、僕は初めて誰かとの賑やかな食事の時間を過ごしたのだった。

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