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アス第5話
目が覚めると、キョウが俺の顔を覗き込んでいた。
「ん、やっと気がついた?アス、大丈夫?」
まだ頭がボンヤリしていたが、さっきまでのあり得ない状況を思い出し、怒りと羞恥で顔が一気に赤くなる。
俺は上半身を起こし、キョウと目線を合わせた。
「だ、大丈夫なわけあるかよ!お、お前、何てことすんだよ!あ、あんなこと俺に・・・」
「あれ~?まだお前って言うんだ・・アスは良い子になったんじゃなかったのかな?」
「ひうっ!」
キョウが服の上から手でサラッと俺の乳首を擦った。くそっ、さっきまで散々弄られまくったそこは少しの刺激でもジンジンして痛い。
あっ、でもボタンは上まで留められている。服はちゃんと着せてくれたのか・・
「・・キョウ、何でこんなことしたんだよ。」
「え~さっきちゃんと説明したよね。オレはアスが成長するのを待ってたんだって。この前の身体測定でやっと百六十センチになったでしょ?だからそろそろいいかな?ってね。また別の子に告白とかされても困るし。」
「オレは昔からアスが好きで好きで堪らなかったんだから。」
「はぁっ?おまっ・・いや、キョウ!何で俺の身長とか知ってんだよっ?!」
「オレはアスのことなら何でも知ってるよ。」
いや、そんな満面の笑みで俺を見られても・・お前普段滅多に笑わねぇんだろ?完璧王子の笑顔ってすげぇ希少価値が高いって女子が騒いでるぞ。
だから最近お前が俺に向かって微笑んでくる度にうるせぇんだよ。
そんなことはどうでもいい。
何でも知ってるって何だよ。怖いわっ!個人情報漏れすぎじゃね?
まぁ、身長くらい他人に知られても普通はどってことないもんな・・・て、俺はとんでもない目に遭ったけどな!
「キョウにとっては待ってた・・・
ってそれも意味分かんねぇけど・・まぁいい、待ってたんだろうけど、俺はずっと無視されてたし、嫌われてると思ってたんだよ。
なのに、いきなりこんなことされて意味分かんねーし、しっ、しかもケツに指突っ込むとか・・そこまでしなくても・・・」
「うん、そうだね。ごめん。でもアスにオレが本気だって分かって欲しかったから・・オレを受け入れる場所を意識して欲しかったから、どうしても指一本だけでも入れたかったんだ。
アスがBL読んでるとか知らなかったし、抜くだけじゃその先まで意識しないかも知れないでしょ?」
「・・・んじゃ、BL読んでるって分かったら必要なくね?」
「ん~そこは知識だけと実際にされるのとは違うんじゃない?どうだったアス?」
「うっ!ち、違うって言うか、BLは完全に別世界のファンタジーとして読んでたから・・・」
「じゃあ、やっぱり必要だったね。アスはオレを受け入れるんだから。」
いや、ちょっと待てよ!
何で俺がキョウを受け入れる前提なんだよ?
今までずっとガン無視されてたことも、俺が今日されたことも怒って当然だよね?
そもそも俺の恋愛対象は女だっつーの!
そうそう、俺への告白排除問題もあったぞ!
「・・・キョウ、俺が今までの仕打ちと今日の強姦を許すとでも思ってんのかよ?」
「最後まではしてないでしょ?強姦って・・すごい言われよう。心外だなぁ。」
「いや、和姦ではないから立派な強姦だろ。」
「ん~でもアスはオレを許すし、絶対オレを受け入れるよ?」
「・・・だよな?明日楽はオレを受け入れんだろ?」
と、口調を変え耳元で囁く。
あぁ、キョウはズルい。
最初から口調を戻さなかったのは、ここぞという時に昔の俺だけのキョウを出して俺を靡かせるためだ。
滅多にしなかった名前呼びも、昔からこのために温存していたのかも知れない。
こいつはこういうヤツなんだよ。王子なんかじゃなく魔王。
完璧魔王降臨だ。
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